【憧れのソファカバー】
制作者:ふじわらかつひと
現代美術二等兵 憧れのソファカバー

僕には特技とも呼べる特殊な才能があります。 それは人に覚えられないこと。 同じ人から何度も名刺をもらったりします。
それは顔に特徴がないということだと思うのですが、人ごみに紛れると、 溶け込んで誰の目にも見えなくなります。友達と買い物に行ってて、 ちょっと離れると、もう僕の姿を見つけることはできません。 目の前できょろきょろしているのをこちらが見ることになります。

もし僕がなにかの事件に巻き込まれて、悪者や警察に追われる立場になったとき、 角を曲がった途端に180度方向転換して、追っ手に向かって歩けば撒けると思います。 自信アリです。

さて作品にもそんなものがあります。あまりにハマリ過ぎてて周囲に溶け込んでしまったり、 意図が伝わらなくて見過ごされたり…。
そんな不憫な例として挙げられるのは「憧れのソファカバー」。

ホテルの一室を展覧会スペースにするという企画で、下見にその部屋に入ったとき、 備え付けの調度品が豪勢で、カーテンやソファがやたら目立っていました。 このまま作品を置いても作品が負けるなーと ソファカバーをつけることにしたのですが、 どうせならそれも作品にしてまえと 採寸してデータを作り、懐かしの「ザ・ベストテン」の セットを再現しました。寺尾聰「ルビーの指輪」が連続第一位の記録をつくったときに 贈られた赤いソファをそのままホテルの一室にフューチャーしたのですが、 世代が違うとまったく気がつかないようで、若い人たちは部屋に置いていた我々の 作品ファイルをソファの赤い部分(オチの部分)に座って、じっくり読んでいました。 作品を見るために作品に座ってしまっているというシュールさ。 「レインボーブリッジを見に行こう!」と車で橋を渡ってしまうようなものです。

このときしか展示できなかった作品なので紹介しましたが、不憫な例として使われて ますます不憫です。


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