月刊駄美術図鑑 2020

「急いでいるとき用マスク」

毎年京都で新作の展覧会をやってます。
ここ数年は年末に。
毎年テーマを決めるのもギリギリになって
制作するのは大慌て。
ただでさえ大変やのに今年はなぜか「100連発にしよう!」と
意気込んでしまいました。

20数年前に「現代美術100連発」という展覧会をやったのですが、
今年は「駄美術100連発」。全部新作で。
年々体力も落ちていくのにほんとに「なぜか」100点 つくることに。
搬入までの2週間くらいでひとり50点 つくると。
机の上が材料と工具ですでにパニック。
ちなみに思いついているネタはひとケタくらいしかありません。
どうやって50点そろえるか。
最後数点のジタバタ具合もお楽しみに。

今月の作品はその個展に出す新作「急いでいるとき用マスク」。
このマスクを着けていると、急いでいることが一目瞭然。
角を曲がるときに知らない人とぶつかって、学校に行ったら
そいつが転校生としてやってくるでしょう。

とにかくめっちゃ急いでるんで、このマスクをつけて
がんばるか。



「テディ・ガガ」

「これ、アカンやつや!」この物言いがついつい口から出ることがあります。
凄く美味しいモノを食べた時や、タブーすれすれのモノを見た時に言ってしまいます。
美味しいものの場合、病みつきになるような中毒性のある味に対して、
タブーすれすれのモノは、世間的に揶揄してはダメなモノに対してのパロディーや、
評価の高いモノのモロパクリを見た時に言うことが多いです。
「ヤバい」とかの物言いに近い気がします。
確かにタブーすれすれの面白さには病みつきになる部分があって、
お葬式で笑いを堪えると自分の中で面白さが増幅したりするような状況に
近いのでしょう。
僕たちの駄美術もギャラリーや美術館で普通ゲラゲラ笑ったらダメという先入観が
あるから「クスクスと笑いを堪えるのが大変でした。」との感想を
頂戴しているのかなと思うのです。
逆に言うと、ギャラリーではなく、演芸として舞台で披露したら多分、
スベりまくると思うので皆さんは是非ともギャラリーでご高覧ください。
さて今月の駄美術は現代美術二等兵20周年展の時に制作した作品です。
その時は記念イベントとして著名な方々にテディ◯◯をお渡しし、
それぞれのテディ◯◯を撮影して頂く企画をしたのですが、では我々も作ろうと
言うことで作品化したのがこれです。
レディー・ガガのプリントの上からテディ◯◯のパーツを置いて撮影しました。
題して「テディ・ガガ」。多分「これ、絶対アカンやつや!」かも。


「アルマジロリングケース」

思えば去年はいろいろ活動させてもらった。
金沢の個展、香川・高知でのレクチャー、大分での学生とのコラボ、
尼崎でアートイベント、大阪で展示、京都の個展、ラジオの出演、
テレビの出演などなど、今思うと中年二人がよくやってたなと
思う移動と活動やった。

飛行機が台風で飛ばず、陸路で大分に行ったり、振り子式電車に
揺られて気持ち悪くなったり、いっぱい旅も出来ました。

それが今年は2月にグループ展に参加して以来、コロナ禍で移動も
出来ず、なーんも無し。ギャップがすごいな。
まあこんな年もないと身が持たんか。

なんも活動してないせいか、アイデアもぜんぜん浮かばんわ。
そろそろ12月の個展のタイトルなんかも決めなあかんのになんも
浮かばん。
作品のネタもぜんぜん浮かばんなあ。さてどうしたものか。
プラモやフィギュアは作りたいもんいろいろあるんやがな。

ということで今月紹介するのは、はるか昔に作った作品
「アルマジロリングケース」。
自然界の動植物の形状を技術に活かすネイチャーテクノロジー
みたいやが、アルマジロが丸まって、パクっと閉まる感じが
リングケースみたいやなと思っただけ。
自分ではけっこうかわいいと思ってるんやが、見た人に
あっさり「気持ち悪い!」と言われる不憫な作品です。
さあ、とりあえずガンプラ作ろっと。



「白いブランコ」

コロナ禍のせいで、今年は春以降展示イベントもなく、夏休みも
どこか出かけるのも億劫で、しかも連日体温越えの猛暑続き。
何か考えようにも何も思い浮かばず、こんな時だから久しぶりに
プラモデルでも作るか、と思って購入しても1/35ってこんなに
小さいのか!と老眼の進んだ身には腰が引けてしまい積んどく状態。
物欲もあまり湧かず、さりとてお金が溜まる訳でもなく、生ける屍
とはこの事か!と一足早く老後を迎えた気分でおりました。
そんな中プロ野球が少々遅めに開幕し、応援している阪神タイガースも
意外と検討、中継やプロ野球ニュースを観る楽しみが増えました。
って、ほんまに隠居のような生活です。
昨年は展示関係でも滅茶苦茶忙しく、ほとんど頭が回らないまま
進んでた部分もあり各所にご迷惑をかけたかもで入れませんが、
今年はその分、お休みを頂く年だと勝手に想定しています。
とか何とか言いつつ、年末に個展もあり、他にも仕掛けてるものも
あるので、グダグダ言ってると結局毎度のように焦ることになりそうです。
さて、今月の駄美術「白いブランコ」。昨年の個展で歌謡曲をテーマに
そた時に展示した作品です。中日ドラゴンズにドミニカ出身の
ホームランバッターの「ブランコ」という選手がいたのですが、
これがまあ、我が阪神は彼によくホームランを打たれました。こういう黒人で
体の大きい見た目怖そうな選手はここ最近阪神にはおらず、羨ましくて
しかたなかったです。そんな宿敵ブランコを色白にして描き直しました。
ビリーバンバンのヒット曲の内容とは一切関係のないタイトル繋がりだけの
作品です。



「木綿のハンカチーフ」「絹ごしのハンカチーフ」

オリンピックやるんかなあ。
こっちがやるやるって言うたって、決めるんはこっちと
違うんちゃう?
全世界のコロナがおさまってんと移動も集団行動も
でけへんやんな。
ソーシャルディスタンスで出来るスポーツも限られてるし、
ラグビーのスクラムなんか3人3人が肩を組んで押し合うって
まさに「密です!」やん。マスクしたぐらいじゃなんとも
ならんやろ。

こないだお台場行ったら浜辺に観客席みたいなんが設置してあった。
トライアスロンの観客席かな。
あれって大会期間だけ使ってすぐ撤去するつもりやったんやろうけど、
来年に延期(?)になって1年も海岸にほったらかしにしてて
大丈夫なんかな?
そんな長期の保存に耐えれるようにつくってあるんか?
ほんまに開催できたとして、観客が入ったら崩壊したりして。

ついついグチってしまうけど、ほんまコロナ対策が
なんも感じられへんねん。国も東京都も。
自衛とか自己責任とか言いながらGo toとか始めて
感染爆発。なにやってんのか。
こんなめちゃめちゃな国に世界のアスリートが来るかっ!
台湾やニューヨークは封じ込めに成功してるんやから
もう普通にマネしたらええのに。

さてさて今月の作品はオリンピックとは何の関係もない
「木綿のハンカチーフ」と「絹ごしのハンカチーフ」。
去年ご一緒したアパレルブランドのRBTXCOさんに
ご紹介いただいた刺繍屋さんにデザインを渡して刺繍ワッペンを
作ってもらいました。
ハンカチ自体の素材も木綿の方はコットン、絹ごしの方はシルクと
なっています。
ちなみにオリンピック観戦チケットはひとつだけ
当たってんねん。中止になってうやむやで返金されへんかったら
涙拭くハンカチーフ下さい。



「カーアクセサリー」

作品制作も長く続けていると昔作った作品の古臭さを嫌でも
感じることがあります。素材や技法、モチーフ、すべてにおいて
10年20年も経つと昔感が出てしまうのです。作った当時は
今この瞬間これが面白い、と思って制作しているので、
来年再来年は面白くなくなるのは上等!と思っているのですが
想定してなかった部分で後に古さを感じると、駄美術を
通してでさえ時の移ろいを感じるのだなあ、と感慨深い気分に
なります。
反面、わざと古臭い素材やモチーフを作品化することもあり、
その場合は自分ではいつまでも面白いつもりでいても今度は
今現在作品を見てくれるヤングな人たちに全然伝わらないと
いう事に。ヤング言うてる時点でアレですが。

さて今月の駄美術「カーアクセサリー」。20年くらい前に
作ったと思います。
当時、店頭POP用のソーラーで左右に揺れるメカを手に入れて、
それで思いつく作品を色々作った中の一つです。僕が小学生の頃
トラックとか車のフロントガラスやリアガラスに吸盤で取り付ける
手のひら型のグッズがありました。
それはピアノ線で繋がっているので車が走るとそれに合わせて
ゆらゆら揺れて手を振っているように見える、と言うだけの
代物でした。あの名前も思い出せないカーアクセサリー、
流行ってたのでしょうね。あちこちで見かけた気がします。
その揺れをソーラー仕掛けで再現した車内からの景色を描いた絵が
この作品です。
ギャラリーで壁に掛けた絵の中で蛍光灯の灯りによって延々と
この手がバイバイをしています。もはや説明していても何のことか
分からなくなる程なのできっとヤングたちはもっと理解不能でしょう。



「強情な進化論」

あんまりテレビを見る時間がないためか、数か月たっても「コロナ禍」って
読まれへん。なんやねん「禍」。
インフルエンザやSARSのときはそんなん言うてなかったやん。
なんで急に言い出したんや。なんかを訳したんか?

すでにウィルスが進化や変異してるっていう情報もあって、
まだまだ収束には時間がかかるんちゃうかな。
入学したり新学年になってまだ登校できてない学生はほんまかわいそうやわ。
特に美術系なあ。
そこにしかない設備や先生、生徒との会話、クラブやサークルも含めて学校やん。
すべてオンラインでできることじゃない。
何の根拠もない緊急事態宣言解除で、なんとなく普通に登校するように
なるんやろうけど、1年のうちもう2ヶ月消費してるしなあ。
夏休み冬休みや土日も含めて調整していくんかな。
っつーか 冬はまた第2波がくるんちゃうか。
ワクチンや特効薬ができるまでは厳しいな。なんとかみんな乗り切って欲しい。

さて今月の作品は「強情な進化論」。
大学生時代の作品で発泡スチロールに樹脂石膏をコーティングしたもの。
このやり方でいろいろデカいものを作ってた。
ワニが進化して2本足で生活してるってやつ。ウィルスの進化は困るけどな。
美大生は学校へ行けたら でっかいもん作りや~。



「小さなスナック」

皆さん!ステイホームしてますか!外出たらあかん!ハウス!ハウス!
って犬ちゃうねんから。
しかしコロナはいつ終息するのやら、不安のやり場すら無い毎日ですね。
会社もテレワークしなさい、という事でいつもの作業部屋を掃除して
テレワーク環境を整えたのです。
作品も梱包し直してきっちり収めて、いらんガラクタや使いかけの
めっちゃ古いスプレー缶も廃棄して道具も綺麗に並べたり。
お気に入りの本を並べたりして。椅子もついでに買い替えたり。
「お、ええ部屋やん!」心の中で呟いて「さあ仕事!」となったら
あまり集中出来ないのです。
社用のパソコンに向かいつつも並べた本が気になって自宅で
立ち読みしたり、BGMがしっくり来なくてあれこれ試したり。
考え事をしようと目を閉じるとそのまま眠ってしまう事も。
電話がかかってきて打ち合わせをしても目の前はいつもの光景なので
肝心の仕事の話が耳に入ってこなくて、やっぱり仕事は日常とは
別の空間じゃないと捗らんなあ、と思わされました。
と言うかこの現状が既に非日常なんですけどね。

さて今月の駄美術は「小さなスナック」。三密を避けましょう、と
言う事で小規模の飲食店も仕方なく営業自粛されていると思います。
やむなく閉店という残念な事態もあるとの事で気の毒な限りです。
地元感あふれる小さい飲み屋さん達もなんとか持ち堪えて
終息した暁にはパーっといきたいですね。
作品は往年のヒット曲「小さなスナック」から発想した、やたら小さい
スナック菓子をチャームにして出す少しぼったくりバー的な店を
想定した感じで作りました。
早くマスクを外して三密空間に飛び込みたいですね。頑張りましょう!



「NOW PRINTING」

志村けんさん。。。
何か志村さんのことを書こうと思ったのですが
なかなか整理が出来ず進みません。
なんかもう いて当たり前の空気のような存在だったのかなと
亡くして初めて感じています。

本当に楽しませてもらいました。
物心ついたころから「8時だョ!全員集合」を見て育って、
おもしろさのいろいろなパターンをどんどん吸収させてもらったんだと
思います。

自分ではぜんぜん覚えてないですが、母親によく
「あんた ちっちゃい頃、ドリフのマネ ようしとったで~。」と
言われてました。

今思うとあのボリュームの番組を毎週生放送で公開収録してたって
凄すぎる。 
荒井注さんのいたころから見ていたので、
「飛べ!孫悟空」で敵として荒井注さんが出てきたり、
CMで6人揃ったときは妙に盛り上がったものでした。

ご冥福をお祈りいたします。

今月の作品は「NOW PRINTING」。
雑誌のCD紹介なんかでジャケット画像が間に合わないときとかに
「NOW PRINTING」と表示されているものを
キャンバスにそのまま描いてみたもの。
間に合っているのか間に合っていないのか。。。
志村さんへのコメントが出来ない状況にも似た作品だったので
今回紹介しました。

よし志村さん、あほなことは俺らに任しといて。
ドリフや志村さんのセンスには足元にも及びませんが、
これからもまだまだやるで!



「勝手にしやがれ」

いったいどうなるのでしょうか、コロナウイルスの流行。
世界的な流行で今現在終息の感じもしませんね。
学校は突然休みになるし、オリンピック間近のこの時期に
色々定まらなしい、各種イベントは軒並み中止。
野球のオープン戦や大相撲は無観客で行うとか、この数日で
世の中激動しまくっています。
大相撲の無観客ってどうなんでしょうか。横綱の土俵入りとか
シーンと静まり返った中でやるわけで全て稽古の延長みたいに
なるのですかね。
全部の取り組みが午後3時頃やってる幕下の取り組みと
同じようになる訳です。
ヒエラルキーの象徴のような角界がついに平等になる瞬間を
目の当たりにするのかもしれません。
すみません、ちょっと見たい気もします。
人が集まるイベントは感染リスクがあるから取りやめとなると、
このまま年内いろいろ自粛が続いたりしそうですね。
下手すると僕らの年末の個展も無観客展覧会になるのかも。
いや、そもそも平日などはほぼ無観客なので今更ですが。
さて、流行といえば昨年末の僕たちの個展は往年の流行歌をテーマに
作品を制作、展示したのですが今月紹介するのは「勝手にしやがれ」。
言わずと知れた沢田研二の大ヒット曲です。歌の振り付けで、
サビのところで被ったハットを客席にカッコよく投げるのが印象的でした。
きっと高価なハットなので野球のホームランボールみたいに
後からスタッフが回収してるのかな、と思ったものです。
今ならハットにドローンを装着すれば投げた後、
ジュリーの手元に戻ったら便利だろうと作ってみました。
けどジュリー自らドローンを操縦したらめっちゃ興覚めやね。



「北の宿から」

節分で力士や芸能人が神社で豆まきしてる映像ありますね。
ああいうの行ったことあるんです。
芸能人とか来るやつじゃなくて、地元のもっと小規模の。
会社の近所の小さい神社で豆まきをやるって書いてあったから、
その時間に行ってみた。
神主さんとか、地元の会社の偉い人なんかやったと思うけど
急ごしらえの舞台のようなものから小さい袋に入った豆を投げてくれる。
小さい神社でも200人以上は人も集まってたと思う。
「豆」=「福」というロジックで、みな豆を受け取りたいわけやけど、
投げてくる小袋が、そうそう上手いことキャッチできるわけではなく
必死になって奪い合い始める。
地面に落ちた小袋を奪い合う姿もあちこちで見られ
俺の横のばあさんなんか よぼよぼやったくせに
足元に小袋が落ちてきたら、手を出すんじゃなくて
持ってた杖でカッと突きさしてきやがった。
無人島生活でモリで魚を突き刺すときのあのスピード感で。

なんかだんだん人々が魑魅魍魎みたいに見えてきて
怖くなって、その場をあとにしたわ。
ちゃっかり小袋の豆はゲットしたけど。

それ以来、あの手の豆まきイベントには参加してない。
あんな怖い経験はもうしたくないねん。

さて今月の作品は「北の宿から」。
昭和の名曲をテーマにした先日の個展で展示したもの。
鉄道模型の旅館を揚げもの風に細工した「宿のからあげ」
つまり「宿から」なんやけど、見た人は
ほとんど意味がわからんかったらしい。

自分で自分のネタの「どこがおもしろいか」を解説することほど
寒いもんはないね。こんな寒い経験ももうしたくないねん。



「私はピアノ」

新年明けましておめでとうございます。振り返れば2019年はおかげさまで
現代美術二等兵史上、一二を争うくらい多忙な一年でした。

金沢の個展にはじまり須磨水族園での展示、尼崎での展示、高知、高松での
レクチャー、大分での学生とのコラボと展示、よしもとのギャラリーでの個展と
ファッションブランドとのコラボ、そして年末の恒例の新作展。

今振り返ると「よくやったなあ」と他人事みたいに自分に声を掛けたくなります。
正直秋口からはフラフラでほんとにギリギリの綱渡り状態で各方面にも
ご迷惑をお掛けしたかと思い、この場を借りてお詫び申し上げます。

さて年末の個展では二等兵の得意分野である歌謡曲のタイトルで作品を
作ることをテーマにしようと決め、これはアホな作品が山ほど出来るな!
とタカをくくり制作に取りかかるのを先延ばしにしていたのですが、
いざ作るとなると「N I N J I N娘」とか最初からアホなタイトルの作品や
「赤いスイートピー」とかの超名曲になると駄美術としてボケにくく、
作品化出来る曲探しにすごく苦労をしたのです。

そんなこんなで作品となったものは久々のバカ作品のオンパレード。
深みもクソもない駄美術の原点回帰の展示となりました。

さて、今月の駄美術は「私はピアノ」。高田みづえさんのヒット曲から
発想した作品です。

無機的なピアノが人格を持って「私はピアノ、ピアノなの」と語ったなら
こんな感じかな、と思い作品にしてみました。
現代美術二等兵はあと数年で活動30周年を迎えます。