月刊駄美術図鑑 2019

「簡易タイムマシン」

「スター・ウォーズ」の一作目日本公開が1978年、「エイリアン」が1979年、
「ターミネーター」が1985年。それぞれシリーズが続いてて子どものころに
見た映画のシリーズを自分の子どもと見に行くことになるとは
全く思ってなかった。しかも自分もかなり楽しみにしてる。
ターミネーターシリーズ最新作の「ターミネーター:ニュー・フェイト」は
シュワちゃんやリンダ・ハミルトンも復帰してシリーズ「2」の正当な続編で
あると。で「3」「4」「新起動/ジェニシス」なんかはリンダ・ハミルトンも
「忘れてもらっていい」と。
たしかに「3」ってなんか記憶にないなあ。
覚えてないからちょっと検索したら、あらすじは未来からジョン・コナーを
暗殺するために新型のターミネーターが送り込まれて、ジョンを守るために
ターミネーター(シュワちゃん)が現れるって、「2」と一緒やん。

「エイリアン」も「3」は「2」で助かった人らを全部(主役のリプリーも)
殺してもうてなんかイマイチやったし、三作目は鬼門か。
当時は洋画は「字幕で見なあかん!」みたいに思ってたけど、最近は画面の
中の情報量が多いし、字幕を読むのがめんどくさいから劇場でも吹き替えを
見てまうわ。吹き替えバンザイ。

さて今月の作品は「簡易タイムマシン」。ターミネーターが未来から
登場する印象的なシーンのステージを再現したもの。ここに何かを置くと
未来からやってきたように見えるというまさに「簡易」のタイムマシン
なのですが、展示していても誰も意味が分からず、思わず字幕で説明を
付けたい気分でした。



「防犯ハンガー」

昔ベトナムへ行ったとき、米兵に仕掛けたトラップの数々が
展示されている場所を見学したことがあるのですが、
それは巨大な落とし穴の底に
太い針が剣山のように
沢山並んでいるものや、漫画に出てくるようなネズミ捕りの
人間版みたいなものがあったりで、本当に平和って大事だなと
思わされました。
あんな物理的な仕組みは当時の米兵に想像以上の恐怖を
与えた事だろうと思います。
今の日本でも駅の看板の上にハトがとまらないように
滅茶苦茶するどく長い針を生やしている場所がありますよね。
見てるだけで恐怖を感じます。
何故か針が30センチくらいあって、ムズムズしてしまうのです。
けどあれってハトの脳みそでは「とまりにくいなあ。」と
言う程度の感想で実際は恐怖の意味すら分からないのではと
思います。さすが平和の象徴、ハト。
ということで今月の駄美術はハトとは関係ない作品です。
人の衣類を盗もうとする不届者を懲らしめるために有刺鉄線で
作ったハンガーです。
手癖の悪い輩から衣類を守れますが大切な洋服は守れないという
ジレンマに陥るハンガーです。



「変身リング」

そういえばまだ「缶詰リング」を紹介してなかった。
ですが、違うリングの紹介を。
思えばもともと「缶詰リング」は2007年につくったもの。
それ以降「プラモリング」「カリオストロの城の指輪」
「ステージリング」「リングのリングのキーリング」など
このサイトで紹介していないものも含めて
いろいろ指輪ネタをつくってます。

今回の作品はものすごく説明が必要なのでぜひこのコーナーでと。
「変身リング」といいまして、不定期開催のイベント
「おバカ創作研究所」で『変身』というお題の時につくったもの。

子どものころ「変身忍者嵐」という特撮ヒーロー番組があって、
その「嵐」の顔を手でつくるという遊びがあったんです。
指だけでけっこう複雑な顔を再現することができて、すごいな~と
思ってましたが、一番の特徴である羽根飾り(眉毛?)がないので
それをつけてみたらどうかなと。
指輪になっていて中指に装着。いつも通りに指で「嵐」をつくると
見事に「嵐」が完成するのです。
「変身忍者嵐」自体は検索して確認してください。

「缶詰リング」の取材の時に「男性なのになんで指輪を?」と
聞かれたのですが、制作スペースがどんどん小さくなって、
つくるものがどんどん小さくなった結果なのです。
そのうち米に何か描きそうです。


「大人の階段登ったティアラ」

大人ってなんでしょうね。いきなり哲学的というか、青臭い少年の
問いかけみたいな話をしてしまいますが。
僕たちの作品を観てくれたお客さんからたまに「大人が全力で馬鹿な
ことをしている。」と、ニュアンスとして褒め言葉的に感想を
いただくことがあります。
それはそれで有難いのですが、子供が全力で馬鹿なことをする価値と
大人がそれをする価値にそれほど違いはないのになあ、とちょっと
複雑な気持ちになるのです。褒めてもらった方に言うとがっかり
するかもしれませんが、全力で子供みたいに馬鹿なことを
している風に見えるかもしれませんが、実は大人として色々気を
使って馬鹿に見えるように全力で工夫している、と言うのがより
近い気がします。
子供が全力でやる馬鹿なことって、粘土でウンチを作ったり、
給食のパンを丸々一個口に入れるとかエスカレーターを逆走とか
後先考えない行動が多いじゃないですか。それに近い作品を
作る人もいるかもしれませんが、個人的にはなるべく長く
続けたいので分別くさいのですが後先考えてしまうのです。
と言うわけで今月の駄美術は「大人の階段上ったティアラ」。
プリンセスネタと言うお題の作品発表イベント用に作った作品です。
アニメの主題歌にもなった「想い出がいっぱい」の歌詞の中で
「大人の階段登る、君はまだシンデレラさー」と言う歌詞を
思い出し作ってみました。少女から大人へ変わる頃を表現したの
でしょう。甘酸っぱい歌詞です。
しかし大人であることはしっかり主張した方がいいかなと、
お節介ですがティアラに大人の世界を表す18禁マークをあしらって
みました。
粘土で作ったウンチと何が違うのか?という問いの答えは上に
書いた通りです。


「タイトルを確認しています。(本人が)」

選挙ありましたな 選挙。

いつも子どもを車で駅まで送っていくんですが、
そんな人がいっぱいいて、みんなタッチ・アンド・ゴーで
子どもを降ろして、さっと走り去っていく。
その一番都合のいいポジションに選挙カーを停めて駅前に立って
「おはようございます!」とか言うてる候補者がいっぱいおる。
ちょっとずらした別の場所に置いたらええのに。
そういう観察力や配慮のない人には当然、票は入れられへんわ。

あと投票率が低い低いっていうてるけど、上げること考えたらええのにな。
現時点でも投票証明書でいろいろサービス受けられるんやから、
いっそのこと投票日に各地でいろいろなアーチストがライブをやって、
投票証明書で入れるようにしたらええんちゃう?
ミュージシャンでもお笑いでも。
年齢層ごとに会場とアーチストを変えて、みんなが楽しめるような
フェスみたいなやつ。
証明書欲しさで投票するにしても誰かに投票せなあかんわけやから
ある程度考慮して選ぶやろ。
今はとにかく投票所に行くことをせーへんわけやから。

よくどの政党がどういう政策なんかわからんって言うてるけど、
それはもう自分で能動的に見ていかなしゃあないわ。
ほっといて受動的に入ってくるもんちゃうわな。
みんな次の選挙はどんどん自分で調べて投票に行こう!

さて今月の作品は「タイトルを確認しています。(本人が)」。
ヴィーナス像が後ろに貼られた作品名を自分で確認しているところです。
過去の画像をいろいろ調べていて、2000年に作ったこの作品が出てきました。
存在すらまるっきり忘れていた作品。。。
自分でしっかり確認するのは大事ですね。



「即反則」

世の中色々なルールが見直され「ダメかもと思ったけどつい…」「皆やってるし、
バレなきゃOK」みたいな話は通用しなくなりましたね。当たり前と言えば
当たり前なのでしょうが。
巷を騒がせている芸人の闇営業の件も当事者でないと分からない事情もあるだろうし、
内緒の慣習みたいな部分はずっとあったんだろうなあ、
と関係ない僕でも容易に想像できたりします。
もちろん会社に無断で営業し、しかも反社会勢力に、ってのがNGなのは分かりますが。
会社の備品の消しゴムやペンをうっかり私物化することもルール上ではアウトでしょうし、
昔、弁当屋のおばちゃんがゆで卵をオマケしてくれた事があったのですが
それも店長に黙ってやってりゃアウトなんでしょう。
最近はコンプライアンスの徹底とか言って、ちょっとした無茶もやりにくく、
いちいち先回りして考えて動かないといけないのはちょっと息苦しいなあ、
と内心思うのです。
美術、芸術の類は「アートですから」みたいな免罪符があるように思われているので
その辺はいくらか自由な部分もあるのですが、それはそれで誰かを傷つけたり
してないかな、とか実は良心的作家の現代美術二等兵は余計に悶々と
するのです。「それってコンプライアンっす、ガバナンっす!」とかええかげんに
茶化しておれたら楽やろなあ。
さて、よくよく考えたらコンプラ的にアウトな作品が多い今月の駄美術は「即反則」。
有刺鉄線で出来たボクシンググローブです。コンプライアンス的に~とか検討する
間もなく、これで人を殴れば即アウトな代物です。試しに手にはめてみると
真っ先に自分が傷つくという、何か深い意味がありそうですが、そんなこと考えずに
うっかり作ってしまいました。


「アポロ透明標本」

GW(謎の10連休)に金沢で個展をやらせてもらってました。
改めて言うと、スタートは「平成」で、終了したのが「令和」という
「元号またぎ」の展覧会で、狙ってもそうそうできない不思議なタイミングの個展でした。
搬入搬出があったんで、初日と最終日に会場に行って反応を見せてもらったら
みんな楽しそうに作品を見てくれてて、こっちも楽しかった。
ときどき自分自身で「なんでこんなことをやってるんやろ?」という疑問も
頭をかすめますが、すぐに「ご飯なに食べよかな?」とか
「のどぐろの握り寿司食いたいな。」とか
俗にまみれたことにかき消されてしまうのです。

今月の作品はこの個展にも展示していた「アポロ透明標本」。
透明標本というのは生物の骨格を様々な染色法を用いてカラフルに染めた標本で
生きていた時の状態で内部骨格が観察できるというもの。
とてもきれいで、自分でも作りたいなーと思い、生物じゃないものを標本化してみました。
もちろん本当の染色方法で透明標本にしたわけではなくダミーでそれっぽく作ったもの。
型取りして透明樹脂を流したり、彩色したり、ちまちまやりながら、
「なんでこんなことしてるんやろう?」とやっぱり思ってました。

ところでなんで10連休ってことになったんやったっけ?


「見ざる言わざる聞かざる」

平成終わりましたね。作品発表始めたのが平成4年からなので
山あり谷ありがこの平成の間にあったのだなあ、と思うと最近は
「今平成何年やったっけ?」と忘れがちだった元号に対して少し今さら
ですが感慨深いものがあります。
昭和から平成になるときは国を挙げての自粛ムードだったので
こんなイベントムードではなかったし学生だったので行くとこもないので
ふじわらの下宿に集まって鍋パーティーをした記憶があります。
昭和の終わりはテレビのテロップで陛下の病状が流れたり、CMでは
「お元気ですか?」と井上陽水のセリフがカットされたりと今にして思えば
異様なムードでした。しかし今回は4月30日は大晦日感覚で平成時代を振り返り
5月1日へ向けてカウントダウン的な盛り上がりを見せたりと明るい幕開けで
正月気分を二度味わえ、ちょっとおトクでいいスタートだなと思った次第です。
さて今月の駄美術「見ざる言わざる聞かざる」。去年の新作です。元ネタの
日光東照宮の三猿が口を抑えたりしてる様子を「言わざる」とかダジャレみたいに
なぞらえているので更に字面をストレートに再現しました。
タイトルそのままで説明不要の作品になりました。
令和になってもこのレベルから進化するかどうかは判りませんが、
まだまだ見て、聞いて、言い倒すジジイで行きたいと思っております。


「ちょっとしたパーティに」

通販番組なんかで「ちょっとしたパーティに最適です。」
みたいなコメントがあるんやけど
ちょっとしたパーティって なんや?
西田ひかるのバースデーパーティは本格的なパーティなんか?
「ちょっとした」の線引きが知りたいな。

ちなみに俺らの展覧会のオープニングパーティは 
たいがい平日ということもあって、
籠谷 ふじわらの ふたりきりでスタート。
ギャラリー近くの業務スーパーで買うたスナック菓子を
つまみながら、ただ時間が過ぎるのを待っているだけみたいな
感じになりがちやねんけど、これは「ちょっとした」にも
なってないか。
そのうち知り合いが何人か来てくれて、やっとパーティっぽく
なるんやけど、このへんから「ちょっとした」になるんかな。

そんなこんなで今月の作品は「ちょっとしたパーティに」。
有刺鉄線でいろいろつくったシリーズ。
有刺鉄線のハンドバッグです。
ちょっとしたパーティにこれを持って行って
ちょっとした人々にちょっとした威嚇ができるという
ちょっとしたものです。


「なりかけプリンセス」

「変身」というのは一瞬で変わるように見えても細かく見て
いけばその途中段階が必ずあります。自分の記憶ではその姿は
大体が中途半端だったと記憶してます。
古いところではウルトラセブンがウルトラアイを目に当てて
から変身完了までの途中に鼻から下が生身で目から頭が
ウルトラセブン状態という間抜けな状態があったり、
イナズマンでは前段階にサナギマンというクソの役にも
立たない姿で敵にボコられるしか能が無い状態があったりと、
子供心に「さっさと早変わりせえや!」と思ったものでした。
実際の生物でもセミがサナギから羽化してすぐの時は生白く
なんともおぼつかない状態で数時間後に普通のセミになると
いう中途半端な時を過ごしています。
ちゃんと完品で出てきたら外敵にも襲われんだろうにと思う
のです。
去年イベントで「プリンセス」というお題の作品を披露する
機会があったのですが、お題を聞いた時に思い出したのは
「シンデレラって魔法をかけられたら割と一瞬で変身した
よなあ」と。アニメでは一瞬のようでも途中は必ず微妙な
状態があるはずやと。
例えばサラリーマンがスーパーマンに変身するとして、
きっとその途中は忘年会の裸芸のようなパンツ一丁に
ネクタイ状態の間抜けな瞬間があるはずやと思うのです。
そんな中途半端な状態の何かを作ろうと思い、出来たのが
この「なりかけプリンセス」。
例えば普段トイレ掃除のパートをして疲れ切った女性が
何かのきっかけで魔法をかけられシンデレラに変身する
途中の手にはめたゴム長手袋はこんな感じじゃなかろうか
と。
これが徐々に舞踏会にふさわしい長手袋になるのです。
子供向けのプリンセスの衣装セットに「なりきり
プリンセス」とか言う商品がありますが、是非
フルコーディネート版「なりかけプリンセス」があったら
いいなあと妄想しております。


「リモートコントロール味噌汁」

平成も31年かあ。
そんな平成も残すところ数ヶ月。
俺は昭和育ちで、ついこの前に平成になったばっかりと
いう感覚なんやがよくよく考えてみると、俺の人生でも
昭和より平成の方が全然長いわ。
なんかいまいち平成を認めてないような気がする。
京都や奈良の人が「今は東京に都を貸してるだけ」って
思ってる感覚と一緒かな。違うか。。。

今月の作品は「リモートコントロール味噌汁」。
その名の通り味噌汁椀を赤外線コントロールで走らせる
ことができます。
空気の膨張やらテーブルとの摩擦やら
いろんな条件がバッチリそろったときに お椀がすーっ と
動くあの現象をいつでも体感できるというもの。
昔はどこの家庭でも見られたと思うんやけど、最近は
あんまりないんかな。
昭和遺産のような気がする。
この作品はシュレッダーに額縁をつけたやつや、
映画館でスマホをいじるシーンをジオラマにしたもの
と同じく、ツイッターにアップしたんやが、そんなに
反響もなかったわ。
そもそも味噌汁が動くことに何の感慨もないんか。
っていうか平成の人らは味噌汁より、チャウダーやら
ビスクやらもっとこじゃれたもんを飲んではるんかな。


「ポジティブ進化」

改めまして、新年あけましておめでとうございます。2018年
は本当に公私ともに慌ただしく、本当に密度たっぷりな1年
でした。
作品関連も春から六甲ミーツアートのアンコール展示と
いう事で「KoiのRock ‘n’ Roller」を再設置させて頂き、
相次ぐ悪天候により、途中仕掛けが水没、破損して なんとか
修理して、又故障してとトラブル続きでしたがなんとか
やり遂げ、白金台で個展をしたり、おバカ創作研究所に参加
したり、雑誌でコラムを連載開始し、大分でレクチャーや
展示をして、そして先日の京都での個展。
その間にも、地震、大雨、猛暑、台風、さらに悲しい別れを
経験したり。。。
もうこれは映画化してもええんちゃうの?というくらい
ドラマチックな1年でした。
まあ、年々体力や記憶力が衰えてきているので、いろんな
出来事に過剰反応したり、頭の中で思い違いをして
脚色してるのかもしれません。脳内映画化みたいなもん
ですわ。
さて、来年もつらいことは少な目、楽しい事は多めに、
思い違いでもいいのでより良い1年にしたいですな。
(波平声で)
で、今月の駄美術「ポジティブ進化」。鮭をくわえている
木彫りの熊は置物の定番ですが、それぞれ進化をすれば
いたちごっこな訳で、魚が空を飛べば熊は首が伸びて
それぞれ前向きに進化するのでは?という仮説を
作品化しました。我々もこんな風に前向きに進化したい
ものです。