月刊駄美術図鑑 2004

「アクション鑑賞術」

今から20年以上前、「アクションカメラ術」という本が
ベストセラーになったことがあります。内容はいろいろな
隠し撮りの手法が解説されていて、「あなたも明日からスカート
の中を覗き見しましょう!」といった今からから思えば犯罪
すれすれの内容だったと記憶しています。
子供心にいいのか?
こんな事をして、と思いながらドキドキして立ち読み
しておりました。

さて、昨今も有名タレントや大学教授が覗き見で逮捕される
事件がたびたびありました。
犯罪自体は卑劣で許されないのですが、
このような行為に駆り立てられるのはきっと人間の
根底に本質的な覗き欲求があるに違いないのでは?と考えます。
きっとスカートの中身を見ることよりも、その行為に重点が
あるのでしょう。

で、この「アクション鑑賞術」。美術の鑑賞方法もそのような
覗き見スタイルで堪能していただこうという提案作品。
運動靴の先に手鏡がついていて、天井の絵画を映してドキドキ気分で
鑑賞します。あ!ハダカや!と思ったら神話に出てくる
女神像だったりというハプニングも 微笑ましいですね。



「ジャパニーズトラディショナルキーホルダー」

先日の展覧会で「歴代駄美術ベストテン・ワーストテン」というのをやった。
あらかじめ二等兵がピックアップした作品20点を展示し、
来場の方に投票してもらうという形でやってみた。投票していただいた方々
ありがとうございました。結構、票がわかれるもんだなぁと 
あたりまえのことにおどろいたりして…。
ワーストとして票が入るのも確かに悲しいんですが、何にも票が
入らない方がもっと悲しいですね、実は。
投票結果は改めてサイトにアップします。

さて今月の作品「ジャパニーズトラディショナルキーホルダー」。
「スターウォーズエピソード1」で盛り上がっているころ、
各企業がノベルティで「オリジナルスターウォーズグッズ・プレゼント」
ってのをやっていて、「え?オリジナルでいいの?」と二等兵オリジナルの
スターウォーズグッズとして作ったもの。
観光地のみやげ物によくあるダルマの目が飛び出すキーホルダーを
ヨーダバージョンにアレンジしたもの。
傾けると目が飛び出します。

今回のベストテンにはラインナップしませんでしたが、意外と周りの
反応がいいことに最近気がつきました。そういえば「誰ピカ」に出たとき、
糸井重里さんも気に入ってたような…。
本来ならこれが上位にランクインしてたかも…。



「すてきなメロディー」

現代美術二等兵をはじめたきっかけのひとつが、巷に
あふれていた屁理屈の多い作品に対し全く逆のアプローチを
したかったという理由があります。
作品にはしかるべき美術の文脈にのっとったコンセプトがあり、
またそれを言葉で説明できなければならないということを
よく耳にしました。

じゃあ、そんなことは無視してひたすら無意味なものを
衝動的に大量に作ろうとしたのが第2回展覧会の「現代美術100連発」
でした。これはそのときに作った作品です。

酒の枡にオルゴールを仕込み、そのスイッチはプラモデルの兵隊の腕に
なっています。天面はポールアンカのポートレイトで後ろの渦巻き
音楽にあわせぐるぐる回ります。そして枡の側面には焼きゴテで
「酒」「涙」などと印しました。全く意味の無いオブジェですが
言葉では説明できない魅力はあると思うのですがどうでしょう?



「狭い・・・」

昨今の格闘技ブームの中でプロレスは低迷していると言われている。
金曜8時に猪木やタイガーマスクを見ていた時代とは違ってきている。
テレビ放映はあるが深夜ばかり。
マニアしか見ない→新規ファンが増えない と悪循環。

・細分化された団体
・スター選手の不足
などなど低迷の原因はいろいろあるのだが、一番の原因は
会場に来た客を満足させられないことにあると思う。
もともと好きなので何度も会場に足を運んだことがあるが、
何度もがっかりさせられた。
散々あおっておいて 乱闘→ノーコンテストとか 不透明決着とか 
むかつくことがある。
それでいて「次の後楽園ホールで決着だ!」などと宣伝を
入れたりするんだが、「次」じゃなくて「今」を満足させられないから
客が来ないのである。
今満足していないのに、次への期待などするか。一度ならまだしも、
それを何年も続けているので、すっかり飽きてしまって
「わざわざ会場に行っても損をするだけ」というイメージがついて
しまったのである。
すごい試合を見たり、驚くべきゲストが登場するなど、期待以上の
サプライズがあってこそ、次も行こうと思うのである。
どの業界でも言えることかもしれないが、
宣伝にばかり重点を置きすぎて本質を見失っている。

なんてえらそうなことを言っておいて、さて自分はというと、

次どころか今回の展覧会もどうしようかとあたふたしている状態。
ただ、見に来てくれる方には楽しんでもらおうという精神は変わっていない。
精神は変わっていないが制作時間がどんどん短くなっているかも・・・。
今月の作品は「狭い・・・」。2000年の「ケースに入れる」ということを
コンセプトにした展覧会に出したものだ。二等兵にはめずらしく、
きっちりした規格に沿って制作した。たまにこういうものもあるから
わざわざ足を運んでくれるのかもしれない。

「望郷模型」

いよいよ夏休み本番、夏休みと言えば里帰り。毎年この頃になると
新幹線の乗車率が150%とか、高速道路が帰省ラッシュで大渋滞
というニュースを聞きます。しかし日本人はなんだかんだ言って
お盆になると律儀さ全開ですな。とりあえず墓参り、とりあえず
実家へ。実家が近い僕などは、そんな混む時期に帰省せんでもと
思うのですが、やはり望郷の念がちょうど今頃MAXになるのでしょう。

てなわけで今月の駄美術「望郷模型」。忙しくて実家に帰れない、
または何かの事情で帰れない人のために作りました。
6畳一間の部屋にはちゃぶ台だけの質素な生活。夕暮れの窓の外
には巣へ帰る2羽のカラス。(ちなみにカラスは太陽電池で左右に
動きます。)ふるさとを思う気持ちを盛り上げたい方におすすめ。

「ジャングルブーツ」

日曜の昼、“モー娘。”の番組のあとに続けて“ジャニーズJr. ”の番組を見ると、
ぶさいくな子供があばれてるだけにしか見えません。
王様のブランチにも最近イケメン(風)のレポーターがでてますが、
レポートがわざとらしすぎて寒いです。女の子の方が断然うまい。
会社で新入社員の面接をやっても、男の子は頼りなく、なにをやりたいんだか
さっぱりわかりません。

スポーツ界を見ても、アテネ五輪の日本選手団は、史上初めて女子選手の数が
男子選手を上回る見通しとなりました。
球技で、日本女子はソフトボール、サッカー、バレーボール、バスケットボール、
ホッケーと実に5競技で五輪に出場し、男子の球技は野球とサッカーだけ。

いい歳こいた大人が秋葉原に群がって、食玩やおもちゃを買いあさっているのを見ると、
先行き不安になります。まぁ僕も買ってる側ですが・・・。

さまざまな局面で「あ~男はダメだな」と思うのですが、女性に負けてないのは
「お笑い」くらいでしょうか?この先もM-1に女性コンビが出ることはないでしょう。
男は唯一残された道「お笑い」を究めて欲しいものです。

さてこの話をどう作品につなげようか、非常に困っていますが、
今月の作品は「ジャングルブーツ」。ダジャレにもなってません。
ちなみにちゃんと履けます。
笑いのかけらもありませんが・・・。

「鳥はもともとホームレス」

余計な御世話っていろいろ世の中にありますよね。
最近うっとうしいのが新幹線のレールスターのサイレントカー。
途中停車駅のアナウンスをしない車両なんですが、
それってみんな終点まで乗るんやったらいいのですが、広島とかで
降りる人は乗り過ごすのでは!と緊張して全然くつろぐことができず、
高いお金を払って何をしてるのかわからない訳です。多分、
やかましいアナウンスに邪魔されることなくゆったりと旅をしたい人に
対する計らいでしょうが、全く余計な御世話。
だいたい乗り過ごしたら、運賃取るんやろ、このJR!
事実、前売りの指定席買うのが遅かったら大概がこのサイレントカーに
されるぐらい人気無し。
根本的な部分で勘違いしとるのです。

さて今月の駄美術作品。前述の文とはあまり関係ないのですが、
よく 野鳥の為とかいって巣箱をそのへんの樹木に取り付ける人がいますね。
鳥さんのために素敵なお家をつくってあげるというのは、心優しくて
善い行いのようであるけど、ちょっと考えてみたら鳥って空を飛ぶのが
最大の特徴でそれだから特定の住居を構えない自由さが売りだと思うのです。
てことはある意味ホームレスではないのか?
じゃあ、巣箱っていうのは余計な御世話ではないのか?
けど僕なりに優しさを表現したい。
で、そんな屁理屈をかたちにしてみようということで作ったのがこの作品です。
ホームレスならそれらしくブルーシートでお家をつくってあげました。
これもちょっと余計な御世話なのでしょうか。

「※2-B2」

今や日本は食玩天国。ありとあらゆるものがミニチュア化されて
コンビニにならんでいます。中には「なんじゃこりゃ」と思う
とんでもないものもあるんですが、逆にそのスピリットはうらやましく
思います。
なぜなら大きい会社になればなるほど商品化するまでに超えなければ
ならない壁がいくつもあり、ちょっとした思い付きやシャレでモノが
作れないのです。
流通や店舗に対して、もしくはそれ以前の社内のプレゼンテーションで、
裏づけの数字やデータ(番組視聴率・劇場動員数・アンケート集計結果など)
を求められ、「売れるのか」を必死に検討しているようです。
しかし果たしてそれらを提示した商品はすべて売れているのでしょうか?

結局はデータに表わせないセンスが必要なのだと思うのです。
何十年も前からあらゆるメーカーが展開していた食玩。今になって
海洋堂がその食玩の先駆者として扱われているのはなぜなのでしょうか?
そこにはデータに頼らないセンスと情熱があったからに他ならないのでは?

仮にチョコエッグ発売以前に「卵型チョコの中に何を入れて欲しいですか?」
と、当時、食玩を買っていた層(主に子供)にアンケートを取ってみたら
どうだったでしょうか?
1位は「日本の動物の精密ミニチュアモデル」だったでしょうか?

アンケートの結果は消費者(と、作り手が勝手に決めている層)の
頭の中にあるものにすぎない。家電やキッチン用品ならともかく、
エンターテイメントがそれでいいのでしょうか?

商品によって新たな購買層が生まれることもあるのです。
「食玩は子供のもの」と決めてかからずに展開したからこそ
海洋堂の成功があるのではないでしょうか?

何に対しての愚痴だかわからなくなってきましたが、
さてさて作品は「※2-B2(コーメツービーツー)」。ラジコンで
操作できる移動型米びつ。
頭部には炊飯器も内蔵しており、どこへでも炊きたてご飯を届けられます。

何のマーケティングも消費者アンケートもなく、創ってみたらこんなもの。
ビバ!駄美術!

「熱湯甲子園」

春はセンバツから!というくらい春といえば高校野球の選抜大会。
僕の通ってた高校は野球部が弱かったので、春休みに
学校の近くのタコ焼き屋の前を通りかかると丸刈りの部員達が
野球中継を見ながらプチ解説者、評論家になっていたのを、
この季節になると思い出します。
「さっさと練習せいや、お前ら!」と、その頃は思っていたのですが
今、自分がBTを立ち読みしながら「こんなんどこがええの?」と
憤っている姿も、あの高校野球界の底辺をさまよっていた彼らと
たいして変わらんのかなと思うのです。

さて、今月の駄美術作品「熱湯甲子園」。
高校野球といえば僕にとってはPL学園。で、PLといえばあの人文字。
印象深い北朝鮮のような、「調教」という言葉を思い起こさせる
美しい応援。そのビジュアルと熱い想いを、高校野球のダイジェスト番組
「熱闘甲子園」のタイトルにひっかけて、タイル張りの湯船で再現したの
がこの作品です。
選抜はもちろんの事、予選落ちどころか、土俵にものってないので
涙で拾う土さえないのです。


「カラーバリエーション」

1月25日にスタートした特撮番組「仮面ライダー剣(ブレイド)」。
ライダー世代の俺としては毎回欠かさず見ているが、わからん。
ぜんぜんわからん。
何がわからんかというと人の区別ができん。
数年前から特撮モノにイケメンを大量投入する流れがあり、
そこからオダギリジョーや葛山信吾なんかも輩出されてるが、
今回のはひどい。初回から同じような顔、同じような髪型の
イケメンが3~4人(人数もわからん)が登場し、ライダーに
変身したり、それを目撃したり、
助けられたり、裏切られたり・・・。

同じ特撮でも戦隊モノはもともと複数の主人公が出る為、キャラを
ちゃんと立てており、顔立ちや髪型に特徴つけているし、
服装も色分けして子供が覚えやすいようにつくっている。
で、ライダーはどうかというと本来一人だったヒーローが
おもちゃを売らんがためにヒーロー自体も増え、ライバルや
敵対関係のキャラも同じようなイケメンをぽろぽろ投入。
結局、わからなくなっとる。
スタッフは、ずっと前からオーディションして、毎日撮影して
顔をあわせているから、当然区別できるだろうが、
週に30分だけ見せられる視聴者の立場に立って考えたことが
あるのだろうか。
こういう不親切さは大嫌い。常に受ける側のことを考えて
作ってほしい。

で、関係ないが、今回の作品は「カラーバリエーション」。
何年も前の作品だが、その後、木彫りクマは
海洋堂プロデュースのオマケになったり、
ロンブーの番組でカスタムされたりしている。

「手羽先天使」

個人的なことですが、食べ物の中でも鶏肉はかなり好きです。
もしかしたらビーフステーキなんかよりケンタッキーフライド
チキンのほうが僕にとっては10倍くらいごちそうなのです。
若鶏の胸肉なんてのは、その響きだけでアレコレ想像して、
もう気持ちがいっぱいいっぱいになってしまうのです。

で、「手羽先天使」。若い妖精?である天使の羽が
名古屋名物手羽先だったら?というイメージを立体化しました。
手羽先部分は本物を型取りして制作してるので、
質感はかなりリアルでいやーな感じ抜群です。

翼の折れたエンジェルならぬ翼をむしられたエンジェルの
この作品はアミューズ主催のアーティストオーディションで
入選しました。もちろん入賞はしませんでしたが。

「大型犬用」

「キャンバスに描いたらなんでもアート」という誤った基本原理に
立ち返り、キャンバスに描いてみた作品。
ジェッソなんて初めて買いました。ははは。何号だかもよくわかりませんが、
縦70センチくらいです。

ベースがキャンバスだけに、なんか意味ありげなイラストとか描いて、
ホントのアートみたいになってもアレなんで、どうでもいいモノを
描こうかと文字にしました。
民家の玄関に貼ってある「犬」っていうステッカー。
あれはどういう効果があるのかよくわかりませんが、近所には
30枚くらいずらっと貼ってある家があり、非常に気になります。
どうせならこれくらい大きくてインパクトある方がいいのでは?

こないだの展覧会にも展示し、もしかしたら無類の犬好きが買うかと
思いましたが甘かった。
みな「犬」は好きでも「犬という漢字」には興味無いようです。