月刊駄美術図鑑 2013

「影武者」

「駄美術」って なんでしょうね?
初対面や 我々の活動を知らない人に つくっているものを説明するときに
なんとなくは 説明できるんですが 
ほんとに「『美術』の仲間なのか」我ながら疑問に思うことがあります。 

最近は「エンターテイメント制作物」と 言ってみたりもしてますが。。。

どのへんが 美術か考えてみると
まず 「画廊で作品を発表する。」という点。
単に つくったものをブログで見せるよりは
「画廊で個展をやってる!」というのは 
かなりのマインドコントロールになります。
「画廊」=「美術作品が並んでるとこ」という既成概念を
おおいに利用してるわけですね。

次に 元ネタの選出。
よくミロのヴィーナスを 元ネタにした作品を作るんですが、
タネ明かし的な話をすると
元ネタが 「美術作品」なので、パロディでも 「美術っぽく」見えるのです。

アンパンマンや がきデカを元ネタにしていたら 同じことをやっても
ただのおふざけにしかならないのではないでしょうか。
イメージって 大切ですね。
髪の長い女性が集まると 「美女集団」と表現されるように
これからもさまざまな手段を講じて
なんとなくイメージで 「美術っぽい」と思ってもらえる作品を
つくっていきます。

さて今月の作品は「影武者」。
黒い布を戦国武将の形に切り抜いたもの。

絵画でも彫刻でもない、ましてや雑貨やクラフトでもない、
ギリギリ美術っぽいと思えなくもないものを選んでみました。

京都の個展の新作でも、六甲ミーツ・アートに展示してた作品ではなく
何の関係もない過去の作品ですが。。。


「THE ヤッくん」

世間では引き続き「ゆるキャラ」ブームで、今も続々と生まれてきてますね。
いろいろあるキャラクターの中でいかにもな「ゆるキャラ」を作ろうとして
出来た、努力の賜物のような「ゆるキャラ」が存在するのですが、
一生懸命 ゆるく見えるように作るってどうなの?と思うわけです。

昔の「ゆるキャラ」は地方の役所の担当の人が地元のデザイナーなどと、
それ こそ真剣により良いキャラクターを生み出そうとしていく過程で、
不幸にも どこかで間違えてしまった隙だらけのキャラクターを
そう呼んでいたと思うの ですが、
作為的に作ったのが見え見えなのはいただけません。
ゆるさを狙って その範疇のなかで完成度の高いプロの仕事は、もはや「ゆるキャラ」ではなく
「マジキャラ」と呼んだほうが良いのではないでしょうか。
かく言う僕たちの作る駄美術も「ゆるい、ゆるい」と
パンツのゴムのように 言われるのですが、
「いや、実際狙ってゆるくしているのです!」と答える ようにしています。
作品によって、ゆるさ加減を変えて、より伝わるように 拵えているのです。
めっちゃエラそう?へたくその言い訳みたいでしょうか。

てなわけで今月の駄美術「THE ヤッくん」。
「美術のクスリ」というグループ 展に出品した「マジキャラ」です。
以前も紹介した坐薬をテーマにいろいろ作 った作品のひとつです。
「ぢろう(痔ろう)くんを救うために自ら虎穴に飛び込む 正義のキャラ」
というストーリーを想定して真面目に作ってみました。


「睡眠中」

この文章を書いてるいま現在、夜中の1時を回ってるんですが
息子(4歳)がまだ起きていて 目の前でなにやらつくってる。。。
いつもは 寝かせるために一旦ふとんに入って 
ダミー睡眠をしばらくして 息子が寝付いたら 
ふとんから抜け出すんですが、今日はどうにもこうにも寝る気配なし。
ふとんの上を バッタンバッタンして1時間経過。。。
さすがにたまりかねて もう起きてろと リビングにつれてきた。

ダミー睡眠してるだけで なにもできないと 
こっちの睡眠時間がただ削られるだけ。
2時間くらい ダミー睡眠して 「映画1本観れたやんけ!」ってこともしばしば。
しょうがないので ダミー中に 柔軟体操やストレッチをしたり、
指回し健康法をやったり、なんとか時間をつぶしてます。

とにかく寝つきが悪いんですが
そのくせ 朝 起こすと眠いだのしんどいだの言って 超不機嫌。
こっちの方が はるかに眠いっちゅうねん!
小学校に入って お昼寝がなくなったら 改善されるんでしょうか。

さて今月の作品は 「睡眠中」。
有名彫刻もゆっくり寝かせてあげようという親心(?)です。

あ! 嫁が起きてきて 怒られた!


「ダルマ全身像」

昔CMで志村けんがダニの殺虫剤のCMで「見えないけどいるよ!」と
いうようなことを言っていて、「見えない」のに「いる」と
断言されるのは、これはもう言い返す術のない
非常に強い言い草だなあと思わされました。
よく目には見えなくてもあるものといえば人の心とか
ファンタジー寄りの希望あふれる言葉が多いのに、ダニとは。。。

この敗北感に似た気持ちは何かというと、
人間が本来認識する手段の一つ「視覚」の能力では把握できないが、
存在すると断言されてしまい、不安が先立ち通常の判断が
出来なくなるのではと考えます。すぱっと断言されると、ぐうの音も
出せない状況に陥ってしまうのです。

ただ、これを口喧嘩に応用すると、これはこれで必殺技にも
成り得るのではと思います。
「匂わないけど、臭いよ!」
「働いてないけど金持ちだ!」
「本気出したら、お前には負けん!」等々。。。
なんかもう殴りたくなりますね。

で、今月の駄美術「ダルマ全身像」。
ダルマに手や足は無いとおっしゃるアナタ、見えないけども
あるんだよ!

「治療中」

実は富士山に登ったことがあります。
新卒で入社した会社の研修で。

たぶんこの先、個人的に行くことないやろうなあと思うと
貴重な体験をさせていただきました。
大人数での登頂が危険だったのか、翌年から地引網体験に代わってました。
富士登山研修最後の年。
あ ちなみに共通一次も僕らの受験が最後でした。関係ないか。。。

で、ご来光を見るべく、小屋で仮眠をして 山頂に向かったところ
  夏だというのに寒い寒い。
最近、軽装で登る人がいるらしいですが、山頂は超寒いですよ。

霧にむせぶ山頂に 自動販売機があり、暖かい紅茶を買おうと400円入れたところ、
うんともすんともいいません。
誰に文句を言えばいいのかもわからず、とりあえず店に入って
  紅茶を頼みました。400円。。。
合計800円の紅茶は 暖かかった。。。

そんな富士山は世界文化遺産登録されたそうで。
以前もこのコーナーで「原始富士」という絵を紹介しましたが、
とかくモチーフにしたくなる山です。
他の国の山もこんなにモチーフにされてるのかな。
キリマンジャロとか、エベレストとか。

さて 今月の作品は「治療中」。
歯医者で銀のかぶせモノをつけてもらうときに、石膏でできた自分の歯型が
出てくるんですが、あの雰囲気の富士山をつくってみました。
もちろん石膏製。
いまだに活火山ということで、火口にかぶせモノをつけて沈静化を
はかってほしいという願望です。

「折りたたみパラソルチョコレート」

現代美術二等兵というのは 二人組で 作品はそれぞれが 勝手につくってます。
そこが 普通のアートユニットと違うところかもしれません。
ずっとこのスタイルなので たまに ふたりでひとつのものを つくるとなると 
すっごい時間がかかるんです。

今年「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2013」というイベントに
参加させてもらうことになり、いつもの作品群を並べるのとともに、
屋外になにかおいてもらいたいと 要望をいただきまして。。。

さてなにをつくる?と 相談をはじめたんですが、
これがなかなかまとまらない。

似ているようで微妙に違うふたりの意見をすりあわせるべく、
日々 メールメールメールメール・・・。
いつもなら どこかで妥協してるのかもしれませんが、せっかくの機会ですし、
お互い納得できるものをつくりたいなと、書類の提出期限ギリギリまで 
メールメールメールメールメール。
なんとか やっと ふたりの案のいいところをとってうまくまとまりました。
まあつくるのはこれからなんで どうやってつくるかな~と。

さて今月の作品は「折りたたみパラソルチョコレート」。
この話とは全く関係ないのですが、何の相談もなく、
ひとりでつくるとこんなもんです。

六甲ミーツ・アート 芸術散歩の開催は9月。 お楽しみに。

「何度も甦る神」

先月末、大阪の新世界で催されたイベント「ツムテンカク」に参加しました。
今回、妄想工作でお馴染みの乙幡啓子さんとこのときだけの
限定ユニット「モー現。」として新世界のひっそりスポット「新世界稲荷神社」に
作品展示をしてきました。

「モー現。」というのは、妄想の「モー」と現代美術の「現」をプラスしたもので、
ユニット名を考えな!と意気込んだわりにシンプルというか、
安直な名前になったのです。
さて、神社での展示ということで、ネタもバチ当たりなものはなるべく避けようと
いうのが前提にあったのですが、個人的にはバチ当たりなものや、テキ屋さんに
叱られそうなものばかり思いついてしまい、己のひねくれ具合を
痛感したのでありました。

作品のメインコンセプトとして、森羅万象あらゆるものに神は宿るという
古よりの言い伝えから発想した、どんなものにでも神はやどるでしょ!という
「NEOよろずの神」というキーワードが出来てからは着地点が
各々見えてきました。
というわけで、その中で僕が作った作品「何度も甦る神」。
パッケージに記載されているリサイクル紙マークを見て、
何度も再生するのだなあ、と思っていたら、「紙」「神!?」と思った瞬間
やってしまいました。。。「神」に復活や再生はつきものということで
お許し願い奉ります。

「素朴さん」

大学時代に何をして遊んでいたかの話を 他人にすると
「ずいぶん 牧歌的だねえ。」と言われます。

どうやって遊んでいたかといいますと 
「裏山に入ってザリガニ獲ったり、川にワナを仕掛けて魚を獲ったり」。。。
今思うと「戦後 間もなくかっ!」と自分でもつっこみたくなるくらいですから、
そりゃ「牧歌的だねえ。」と言われるわな。。

たまにやる飲み会も 居酒屋に行かず、彫刻棟(校舎)の裏で炭火焼きをしたり、
雪が降りしきる中、テントを張って飲んだり。。。
その校舎裏の飲み会は「悲しい歌合戦」といって、誰かが失恋したり、悲しいことがあると
開催する歌合戦で、それぞれが選び抜いた悲しい歌を披露(もちろんアカペラ)する
格調高い(?)宴でした。

一度 真冬に 酔っぱらって動けなくなった僕を彫刻棟に停めてあった車に 
エアキャップとともに押し込んで 皆が帰ってしまい、
危うく凍死しそうになったこともありました。
まあ今となってはいい思い出ですが、やっぱりオーソドックスな大学生とは
ちょっと違うようですね。
そんな環境で 二等兵の脱力感がうまれてきたのかもしれません。
単純に金がなかっただけのような気もしますが。。。

さて今月の作品は「素朴さん」。
「嗚呼!改造彫刻ヴィーナス」という展覧会の時につくったミロのヴィーナスのアレンジです。
ヴィーナスの顔に木の身体、ひもの足。。。
素朴でありつつ アカデミックな面も薄れない二等兵の活動そのもの… か…?

「伝道こけし」

中年独特のいやらしい目線、中年太り、加齢臭…
中年を取り巻く物言いにはろくなものがございません。
老人もたしかにネガティブな言い回しのものが多いですが
「好々爺」など、多少は好意的なものがあります。
もし「好々中年」などという言葉があったとしても
きっとそれは変態的な意味として使われることでしょう。
そんな僕も45歳、中年ど真ん中であります。
元からいやらしかった目線も、昔は「エッチ!もう!」
と多少は好意寄りに返されていたものも、今ならきっと
「このド変態!出歯亀!」と通報モノで騒がれるでしょうか。

先日恒例となりつつある「おバカ創作研究所3」という
トークイベントにて「アダルトグッズ」というお題で
作品を見せ合う機会があり、普段勝ち負けにはこだわらない方
なのですが、このときばかりは「負けるか!」とばかりに
個展並みの気合と作品数で挑みました。
いちいちいやらしい作品をそこで披露したのですが、
多少は受けはしたものの、その中に冷ややかな目線も
少なからず感じたわけです。
確かにここでは公表出来んようなものも制作、発表したのですが。。。

さて今月の駄美術「伝道こけし」。日本にキリスト教を布教しに
やってきたフランシスコ・ザビエルを模したこけしであります。
先のイベントでも紹介した声に出したいタイトルの作品です。
おっさんが作ったからいやらしく感じるのです。若い学生が
作ったと思ってご容赦ください!

「北極みやげ」

ものすごく こまかいことを いいます。

何年前でしたっけか 男子の便器に マトがプリントされたものが登場しました。
マトがあると みんなそこを狙ってオシッコするので周りへの飛び散りが少なくなるという商品です。
なるほどおもしろくていい考え方ですね。

ですが その便器を買わずに 既存の便器にマトのシールを貼るだけで 対応しようとするところも登場。
こないだ とあるトイレに行くと 入ったときは「マトがあるな」と思ったんですが、
いざ便器に立ってみると マトが見えない。
上の方に覆いかぶさった形状の便器で 自分の目からはマトが見えないのです。
あれ?っと思って ちょっと下がってみてやっと見えた。
つまり シールを貼ることで いつものポジションより後ろに下がらせることになってしまってるんです。
これぞ 本末転倒!!
目的を理解せずに 手段だけ講じている。 ちょっと自分でやってみればわかることなのに。

にしても こんなこまかいことばっかり言うので よく「小姑か!」と嫌がられます。

さて 今月の作品「北極みやげ」。
世界中の動物を 北海道の木彫り熊風にシリーズ化しようとしたもの。
マケット的につくりはじめたので 全長4センチほどのミニサイズ。
他には タスマニアみやげのウォンバットと カリフォルニアみやげのアライグマがあります。

考え方も つくるものも どんどん小さく細かくなっていく~。
ほんとに 小さいのは 俺の器か。。。

「丑の刻love参り」

この歳になると、家族以外にバレンタインデーのチョコをもらう機会も
なくなりましたね。会社での義理チョコも、数年前から慣習が
風化し(いや、俺の知らんとこではやり取りしてるのか知らんが)
、 倍返しとかの理不尽な制度にモヤモヤした気分になることからも開放されて、
今では特に感慨のあるイベントではなくなった気がします。
しかし、気にはならなくなったとは言え、毎年ぼんやりと思い出すのが
35年も前のエピソード。。。

当時4年生だった僕は2月14日がバレンタインデーだということも
何も意識せず、いつものように友達と二人で下校しつつ、いつものように
公園に寄り道しだらだらと遊んでいました。
ふと、気付くとクラスの女の子2人がつつっと近寄って来て、いきなり
友達に封筒みたいなものをそれぞれ手渡したのです。
ええ、僕ではなく友達に二人がそれぞれ。女の子2人はあまり話さず
さっさと帰って、友達は2個の封筒を空けてみたら、中から不二家の
ハートチョコレートが!どっちにも同じチョコが。手紙も入ってたな。
そいつは「何これー。」と迷惑そうな、にやけたような表情をしました。
僕は僕で「ははっ、何のつもりやねんやろな。」等とこの状況について
深く話をしたくなかったのか、さっさと話題を切り上げるようなリアクション を
していました。友達と別れて家に帰るまで、なんともどんよりとした 気分で、
心の中で負けを認めたくないような言い訳をネチネチしていたと 思います。
しかし僕は家に着いて、自分の財布から100円を取りだし、
近所の菓子屋へ向かいました。そして不二家のハートチョコレートを買いました。
そう、思いっきり敗者のそれです。食べてみたら意外とうまい。
ピーナッツがいいアクセント!「うまいやんか、チクショー!」
そんな心のヒダがひとつ増えた10歳の2月14日でした。

で、今月の駄美術「丑の刻love参り」。恨みを晴らす行為ではなく、恋愛成就 の
ための丑の刻参りを想定してみました。五寸釘ではなく、天使の矢で
ふわふわ藁人形を射抜くわけです。という訳で、今年のバレンタインデー、
皆様の恋が報われますように。と、心にも無いことを書いてしまいました。

「御利益2倍」

まだしつこく言いますが 去年は活動20周年記念で
いろいろなことをやらせてもらいました。

ほんとに感謝感謝でございます。
会場のスタッフの方々、コラボ展にご参加いただいたアーチストの方々、
そしてご来場いただいた方々、ありがとうございました。

僕自身、なかなか他人の展示に足を運べないので、
ご来場いただけるということはどんなにありがたいことか 
毎回身に沁みて感じております。

そんなみなさまに何の恩返しもできぬまま ただただ時間が
積み重なって20年という節目を迎えてしまいました。
我々にできることは このままこのペースでくだらないモノを
作り続けていくことぐらいでしょうか。
いつかもっときちんとした形でお返しできればなと思っております。
いや マジで。

そんなわけで今月の作品は「御利益2倍」。
獅子舞に頭を噛まれたあと さらに脳天に第2の顎が突き刺さり、
ベリーハッピーに過ごせるというものです。
今年もみなさんにご利益がありますように!