月刊駄美術図鑑 2008

「鉛筆削り節」

僕達の作品は「言葉」の使い方が上手ですね、と言われることがあります。
正直国語の成績が良かったわけでもないのでそんなふうにたまに褒められると、
ネガティブがベースとなっている僕でも少しは舞い上がってしまうのです。
ただ、作品そのものでなくタイトルの付け方でどうにでもなる作品では?
と言われたときは
正直ドキッとしましたが。
というのも作品の色やカタチよりも先にタイトル(大体変なもの)が
浮かんで、その後
それに合う造形を考えることが多々あるからです。
造形物はタイトルの補足説明みたいなかんじです。
作品だと言ってる手前、少々後ろめたい気もするのですが。
詩集ならまず詩があって、
挿絵はそのオマケみたいなもの?
てことは、作品本体はオマケかよっ!との突っ込みも
御座いましょうが
まあ、堅いこと言わず堪忍してください。

で、今月の駄美術「鉛筆削り節」。「削り節」という言葉の響きが
「ソーラン節」とか「安来節」みたいな民謡イメージがするなあ、と
思ったらすっかりその気になって、そこに
鉛筆の言葉がのっかって
言葉として語呂のいい「鉛筆削り節」というタイトルが出来上がりました。
何かそんな民謡がありそうな気がしませんか?
東北あたりで歌い継がれていそうな。で、こんな風なカタチになったのでした。



「冷凍がに」

いつのころからか、パチンコ・パチスロ業界にキャラクターが投入され、
ここ数年はいよいよ飽和状態、ネタ切れかと思ってましたが、
またまたきましたね。
ついに「ダースベーダー 降臨」です。
僕はまったくパチンコをやらないので、なんとも思いませんが、
スターウォーズファンでパチンコファンの人は衝撃を受けているのでしょうか。

子供のころ、たまたまおもちゃ屋で見た人形がカッコよくて、
なんのキャラだか全く知らずに買ってもらいました。それがスターウォーズの
ダースベーダーとストームトルーパーでした。
未来的な中にも頭蓋骨や鎧兜をイメージさせるそのデザインに瞬間的に
そそられたのですが、あれが30年ほど前に創造されたものだと思うと、
当時のクリエイターたちの凄さに今なお驚愕してしまいます。

当時見た中でも2作目『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』(エピソード5)は
一番好きなエピソードで、雪原の四つ足戦車戦、小惑星間すりぬけ、
雲の惑星での衝撃の告白 etc…と名場面目白押し。
特に賞金稼ぎに追われるハン・ソロ(ハリソン・フォード)が
カーボンフリーズ(瞬間冷凍のようなもの)されるシーンは深く心に
残りました。
カーボンフリーズされたハン・ソロは、立ったまま半分壁に
埋め込まれたような状態になり、額装されたレリーフオブジェのようで、
これまたなぜだかそそられてしまうカタチなのでした。
その後、発売されたカーボンフリーズ系のおもちゃやフィギアは
いまだについつい買ってしまいます。

昨年、開催した「かに展」のとき、この思い出を胸にタラバガニを
カーボンフリーズした状態をつくったのですが、これが
まっ      たく伝わりませんでした。
HEP HALLの入場者アンケートでも「どういう意味ですか?」という質問を
多数いただきました。え~と こういうことです。

30年後 覚えていてもらえるでしょうか?


「詰め込みベア」

先月開催しました大阪HEPHALLでの展覧会は二等兵史上最大の来場者数で、
それまで16年間の来場者数のトータルを10日であっさり抜き去りました。
ありがとうございます。
アンケートもなかなかの回収率で、電話帳2冊分くらいありそうな
勢いで、ちびちび読んでは心の折れそうなときの支えにしようと
思っております。
で、おおむね好意的な意見がほとんどだったのですが、なんと今回
「美術ではない!」という意見から発展した「美術と名乗るな!」という
ご意見いただきました。「“駄”だけにしろ!」ですって。
「駄」だけ。
なんなんでしょうね、美術好きに多いこの傲慢さ。俺がルール的な
偏狭さ。美術ちゃうから駄美術って言うてんのに、それもあかんのか!
久しぶりにこういう人達をもっとムカムカさせるような作品を作ってやろうと
いう気持ちになりました。

さて今月の“駄”は「詰め込みベア」。これは以前ディスプレーをした
専門学校のトイレ前の空間の、多分何か花とか飾る場所というか
隙間みたいなところに、高さ120センチくらいの
アクリルパイプを設置しその中にテディベアを入るだけ詰め込みました。
専門学校で学ぶ皆様は、いわゆる詰め込み教育をされきた人たちとは違い、
自分の道を切り開ける人だ、頑張って!という思いを込めて作りました。
全く伝わってないかと思いますが。
なんとなく美術ぽくて作った本人はあまり気に入っておりません。
以上今月の“駄”でした。これでよろしかったでしょうか?



「主役抜擢」

今回の大阪HEP HALLでの展示はスッゴイです。
過去最大のスペースに過去最高の作品数…。
普段の展示なら自分たちで適当にやってるライティングや
展示台の施工もプロフェッショナルの方々が担当して下さって、
感動したり恐縮したり…。
プロってスゴイですね。

いま思えばどうしてこんなことになったのかよく思い出せませんが、
HEP HALLでやらせていただくということは、いきものがかりやキム兄や
ナイトスクープと同レベルってことでしょうか?ちがいますか?

今回の大量の展示の搬入のために今までのストックを
いろいろひっぱりだしてたら、本当に記憶から欠落してるものもありました。
「うわ! こんなんあったわ!」と…。

この作品もそのひとつ「主役抜擢」。本にも今回の展示からも漏れてます。
普段 作品を引き立てるためにがんばっている額縁たちを材料として作品、
つまり主役に
昇華させてみました。
画力もデザイン力もイマイチで結局、B級作品になってしまいましたが…。
我々もせっかくの抜擢を無にしないようがんばります。
搬入終わったいま、もうなにもすることはありませんが。

「アニマルライフ」

子供が小さいので家に絵本があふれています。昔からある「ぐりとぐら」とか、
聞いたことのない外国のものや、何かのオマケのチープなものまで。
「ぐりとぐら」などは名前が妙に魅力的で、現代美術二等兵などという
堅苦しい名前は、やめてアートユニット「ぐりとぐら」で
再デビューしたいくらいです。しませんが。

しかし絵本というやつがこんなに流通していて、又恐ろしく
ロングセラーなものがあるということは、一発当てるとデカいんやろなあと
想像しつつ、絵本という純真なものの前でもついつい下品なソロバンを
弾いてしまいます。こんなん描いて、ポルシェ乗って、グルメして・・・・
大人ってイヤですね。

さて今月の駄美術「アニマルライフ」。全12作のうちの一つです。
俺流ピーターラビットを描いてやろうと思い、子供が生まれて間もない頃の
寝不足のフラフラの状態で一気に仕上げました。
動物達を擬人化した夢の世界のはずが、今見ると悪夢の一コマのような
シュールな世界になりました。ちなみにこのシリーズはインクジェット版画として
販売しております。是非買ってね!
本当にイヤですね、大人って。

「非常食ピンバッチ」

青い鳥が家にいたというのはよく出来た話で、ほんとに“しあわせ”というのは
そういうものかもしれません。“しあわせ”なんて探して見つかるものではなく
自分の中にあるのです。

たとえば道にきらりと光るものがあったとしましょう。拾い上げてみると
100円玉だった。
そのとき「やったあ 100円!!ラッキー!!」と思えれば“しあわせ”ですが、
「な~んだ 500円じゃないのか…。」と思うとせっかくの100円も不幸の材料に
なります。
ものごとそのものではなく、どう思うかで“しあわせ”かどうかが決まるのです。

若手の芸人のネタを見て「ぜんぜんおもろない!つまらん!」と憤慨するより、
「そのつっこみおもろい~!」と楽しめる方が その人の人生が豊かに、
“しあわせ”になるんじゃないでしょうか? いくら憤慨したところで
「ま~ あのネタで憤慨してるわ~ センスあるんやわ~ ステキ~!!」と
言ってくれるギャルなんてあなたの周りにいません。

われわれの作品を見て「こんなん美術じゃない!」と憤慨してるより、
「あはは あほや」と気軽に“駄美術”を楽しんだ方が、なにかと
いいんじゃないかと思うのですが…。

…と 大仰で卑怯なネタふりをしておいて お送りするのは「非常食ピンバッチ」。
本物のごはんつぶが固まったものをピンバッチにしました。袖口なんかに
さりげなく付けておいて、いざというときに食してみては…というものです。
さて ドデショ?

「テディかに」

テディベアを作品のモチーフによく使うのですが、何故かと理由を
問われると、単純に可愛いからと答えています。
より詳しく言えば、誰でもが感情移入をしてしまう、可愛さの
シンボルのように捉えることが出来る対象だからです。
それゆえ、ネタにしやすいので
安易に作品化しております。
あの可愛いクマちゃんが!あんなことやこんなことまで!
と想像していくと際限なく妄想が拡がっていくのです。
あと、作品化する思考のパターンで、「それがありやったら、
これもありちゃうの?」という発想がベースになることが
多々あるのですが(下手したら8割くらいそれかも)、今回もそれで、
「べアあるんやったら、○○あってもええんちゃうか?」
でやってしまいました。

で、昨年の個展「かに展」に出品した「テディかに」です。
かにをテーマにした展覧会だったのですが、せっかくなら
多くの人から愛されるテディベアをかに化しようと試みました。
かにの特徴である、はさみ、飛び出した目、8本の足をデフォルメし、 かに色の生地で
こしらえてみました。
本当なら中身に綿ではなく、かに味噌でも詰めたかったくらいです。
仕上がってみるとどうでしょう、全然可愛くないわけです。
このようなヌイグルミに感情移入はやっぱ無理ですかねえ。

「休憩中」

そろそろ ひとをにらむのをやめませんか。
ちょっとしくじった人をぐあぁっとにらみつつける人がいますね。
なんなんですかね。

車で走ってて、黄信号で突っ込もうとするも結局横断歩道にちょっとかかって
止まったとき、横断歩道を渡る人が運転席をものすごい形相でにらんでいくんです。
「邪魔なんじゃ オマエ!」と…。
それとかこないだ銀行のATMに並んでて 俺が最前列になったとき、
ちょっとぼうっとしてて、ひとつATMがあいたのに気がつくのが遅れた。
そしたら後ろに並んでるやつが般若のような形相でこっちをにらんでやがんの。
それって「社会悪をこらしめている街のヒーロー」のつもりかもしれんけど、
そんなんひとこと「あきましたよ」って声かけてくれたほうがよっぽど世の中の
ためになると思うけどな。
だいたい俺がただのおっさんやから悠然とにらみつけるんやろうけど、
黒塗りのベンツが横断歩道に止まったり、ジェロム・レバンナがATMで
ぼうっとしてたらにらみつけるか?
相手を見て、自分の安全を確認した上でにらみつけるなんてどこがヒーローじゃ!!
ヒーローぶって自己満足してるだけやろがっ!
っと こちらもテンション上がってきましたが、まあそんな眉間にしわ寄せて
ギスギスしてないで のんびりいきましょうやといいたいわけです。のんびりね。

扇風機も暑けりゃ 休憩すりゃいいじゃないすか。まあアイスティーでも飲んで。

「高齢ロッカーの為の手押し車」

団塊の世代と呼ばれた人たちが定年を迎える昨今、
それら老人やシルバー層と呼ぶにはふさわしくない元気なリタイア組に
向けた商品が巷を賑わしています。
若い頃は買えなかった往年の名車やバイクにはまる人、
積極的に海外へ旅する人、田舎暮らしを始める人、
そんなセカンドライフを充実させるあれこれが大きなマーケットに
なっているとのこと。

実際今の60歳前後の人は若い頃、ビートルズやストーンズに
触れ、スポーツもテニス、
サーフィン、スキー、食べ物もインスタント食品が出始めるなど、
戦後日本のあらゆる価値観の変化を体験した人なわけで、僕が子供の頃
近所にいたお爺さんお婆さんのような杖をついて歩いたり、
道端で日向ぼっこをするステレオタイプな老人イメージに重ねて
見ることが出来ません。
なにかもっとギラギラしてるような、ご隠居などと呼ばせないような
中年の延長のような風というか。
では今40歳の僕達は定年後はどうなんでしょうね。
バブルを経験した世代みたいな言われ方をするのでしょうか。
元新人類?どっちにしてもろくなもんじゃなさそうな。
おニャン子クラブのメンバーを言える70歳など
想像したくないものです。

で、今月の駄美術「高齢ロッカーの為の手押し車」。
元ロックンローラーが老人になったとき散歩の補助的に使う
手押し車をイメージして作りました。チンタラ歩いている歩行者を
威圧する中指を立てたfuckなシンボルと、ゴージャスな豹柄の座面。
ハードなレザー仕様とスタッズ。いつまでもロケンロール魂を失わない
ご老人にオススメです。

「憧れのソファカバー」

僕には特技とも呼べる特殊な才能があります。
それは人に覚えられないこと。
同じ人から何度も名刺をもらったりします。
それは顔に特徴がないということだと思うのですが、人ごみに紛れると、
溶け込んで誰の目にも見えなくなります。友達と買い物に行ってて、
ちょっと離れると、もう僕の姿を見つけることはできません。
目の前できょろきょろしているのをこちらが見ることになります。

もし僕がなにかの事件に巻き込まれて、悪者や警察に追われる立場になったとき、
角を曲がった途端に180度方向転換して、追っ手に向かって歩けば撒けると思います。
自信アリです。

さて作品にもそんなものがあります。
あまりにハマリ過ぎてて周囲に溶け込んでしまったり、
意図が伝わらなくて見過ごされたり…。
そんな不憫な例として挙げられるのは「憧れのソファカバー」。

ホテルの一室を展覧会スペースにするという企画で、下見にその部屋に入ったとき、
備え付けの調度品が豪勢で、カーテンやソファがやたら目立っていました。
このまま作品を置いても作品が負けるなーと ソファカバーを
つけることにしたのですが、どうせならそれも作品にしてまえと
採寸してデータを作り、懐かしの「ザ・ベストテン」のセットを再現しました。
寺尾聰「ルビーの指輪」が連続第一位の記録をつくったときに
贈られた赤いソファをそのままホテルの一室にフューチャーしたのですが、
世代が違うとまったく気がつかないようで、若い人たちは部屋に置いていた我々の
作品ファイルをソファの赤い部分(オチの部分)に座って、じっくり読んでいました。
作品を見るために作品に座ってしまっているというシュールさ。
「レインボーブリッジを見に行こう!」と車で橋を渡ってしまうようなものです。

このときしか展示できなかった作品なので紹介しましたが、
不憫な例として使われて ますます不憫です。

「現実逃避まくら」

ここ最近TVも新聞も、なんでもかんでも値上がりで、
非常にうっとうしい話題ばかりですね。で、給料は上がるわけでもなし、
僕の家の値段が上がる訳も無くこれはマジで生活苦目指して
一直線なのでは?と考えだすと普段の仕事のモチベーションも下がる一方。
ああ、もう辞めたい、しばらく旅に出たい、探さないで欲しい・・・などと
全てをほっぽり出して逃げたくなります。
受験生の頃も、同じように毎日勉強しても、デッサンとかしても同じように、
こんな
ことしててもホンマに受かるんやろか?ああ、やっとれん、
ちょっくら漫画(エロ)でも読むか、お笑い番組でも見て気分転換するか・・・
と横道にそれてしまい一日を無駄につぶしてしまうことがしばしばでした。

ただ、同じ現実逃避でも、社会人になってからのそれはちょっと自暴自棄で
全てを失ってしまっても逃避したいイメージで、受験生の頃のは、
より快楽へ逃げていたと思うのです。どちらも現実逃避なので、
どっちがマシとか言えないのですが、やっぱり若かった頃のほうが
悩みの種類からして少し健全だったような気がします。
まあ、どちらも逃げてるわけで、全く成長してないとも言えるのですが。

さて、今月の駄美術「現実逃避まくら」。
2種類あって、それぞれ「ネガティブ」と「ポジティブ」があります。
前者は全て投げ出してしまいホームレスになった気分が味わえます。
道路を枕にする疑似体験です。もう一方はややこしい現実から逃れて、お花畑で
かわいい動物たちと夢心地で眠りたい、ウフフッ・・・みたいなかんじ。
本当に全てを投げ出す前に自分のタイプに合わせて、こんな枕で
一眠りされては如何でしょうか。

「C C TRAIN」

2008年です。あけました。また1年が始まりました。
今年は9連休というところが多いようですね。
年内に2日休んだ次点で昼夜逆転してしまい、
その後は惰性でテレビとの戦いです。

最優秀新人賞はもう帰り支度?! アッカ、ボビー残念! 
「ルビーの指輪」かっこええなあ。うわ 強風で受付が吹っ飛んだ!
ザッピングしまくってたら頭の中がぐちゃぐちゃです。
うわ リア・ディゾン歌ヘタ~! ヒョードルすげ~! 
え?勝ったのは青組?

さて去年は本当にいろんなことにチャレンジさせていただきました。
LAPNET SHIPでのグループ展に始まり、“スカンクブックエンド”
“こけしアレー”の発売、「エル・ジャポン」「GQ JAPAN」などの雑誌で
作品紹介、セレクトショップ「MANO garment complex」とのコラボレーション、
グループ展に個展、そしてそして年の最後にマガジンハウスから作品集が
発売される…と 驚異的な一年でした。
これからも「駄の道」をゆるくつきすすんでいきます。

で、今月の作品ですが、今回初となるサイトでの新作発表です!
実はいままでは展覧会等で発表したものをチョイスしてこの「駄美術図鑑」に
アップしていたのですが、今回はサイトが先です。
珍しく季節感ありの獅子舞ネタ。
その名は「C C TRAIN」。
EXILEの「Choo Choo TRAIN」を踊る獅子舞たち。「獅~子~TRAIN」です。
新年早々ダジャレでスタート!!
僕らの世代はZOOですが。

この作品は1/3~1/13 京都のneutronでのグループ展
「お正月だよ、ニュートロン」に出展します。ぜひご覧下さい!