月刊駄美術図鑑 2016

「マイコマモンスター」

通勤の時、普段は自転車ですが、たまにバスに乗ることがあります。
雨の日とか。
最寄駅からのバスは始発の停留所で、たいてい座れるんでありがたい。
で、同じバスに乗る小学生の女の子がおるんです。3年生くらいかな。
その子は 二人掛けのシートの窓側に座る。なんでかというと
次のバス停で同じ学校の友達が乗ってくるので、一緒に座ろうと
思っているわけです。
が、荷物を置いたり、通路側に座ったりなどズルいことをせずにきちんと
窓側に座るんで、事情を知らん人があっさり隣に座ってしまうことがある。
で、次の停留所で友達が乗ってきて、その子と会話をはじめても隣の人は
状況を察することもなく、もちろん移動するわけではない。
他の席が空いていても だ。
この状況、もやもやする。非常にもやもやするのです。
クリーン過ぎる女の子の行動と 空気を読めない大人。。。
んー もやもやするんじゃ~。

いっそのこと、最初から俺が隣に座って、友達が来たら替わって
あげようかとも思うんやが、女の子のお父さんが見送りに来ていて、
バスが出るまで窓の外にいるので、いつも同じおっさんが自分の娘の隣に
座ってたら不審に思うだろう。そりゃ思うよな。
俺が逆の立場やったら思うもの。
そんなこんなで、毎回、その子の隣に「誰も座るな~!」と
念を送りながら見守っている毎日です。
度が過ぎたおせっかいのような気もしますが。。。

さて今月の作品は「マイコマモンスター」。
人生ゲームネタのシリーズです。
子どものころ、よく人生ゲームやってた覚えがあるんやけど、
うちの家には無かった。親戚の家や、友達んちでやってたんやな。
そういう場合にボーリングのマイボールのように自分のコマを
持ち寄ったらええんちゃうかと考えたのがこのマイコマ。
車型ではなく、ポケモンやデジモンのようにモンスター型の方が
より愛情がもてるかなと。
いろいろ種類は考えたけど写真のは「子守りベア」、「たんかウサギ」、
「ねこぞり」です。
コマモンと呼ばれて流行るといいな。
流行るよう念を送りながら見守ってください。


「近眼ダルマ」

皆様のおかげで現代美術二等兵も今年で活動25年目を迎えます。
そして来年は25周年と、自分らで発信して勝手に盛り上げようと
画策しております。25年といっても当人にとっては、ああ、そうかあ、
という程度で他人事みたいな気持ちになるのですが、いろいろ
思い返すとあれこれエピソードがあったなあ、と感慨深い心持に
なります。その辺の思い出語りは又来年にとっておくとして、
自分的には気持ちの部分では全く成長しておらず、その辺の
木ですら年輪を刻むのに、我々の変わったことといえば加齢なり
の衰えばかりという体たらく。あちこち痛い、小さい字が見えん、
等、しんきくさい事ばかり。これではうっとおしい気分になって
しまうので、今年は活動25年目という節目であり、一度原点に
立ち返って若さを取り戻した気分になろうと思った次第です。
それが個展テーマに反映させたのです。って言うかこれ書いてる時点で
仕上がった作品ゼロなのですが。。。

というわけで今月の駄美術「近眼ダルマ」。近眼の人を漫画で
描くと数字の3みたいな目で表現するよなあ、と思い作った作品
です。ただ、今改めて見ると、老眼で小さい字が見えにくいから
眼鏡を上げて見ている中年のダルマにしかみえませんな。


「北欧のASIMO」

字の下手な人には2種類あると思うんです。

まずひとつめは 字の形そのものを覚えてない人。
間違ってはいないけど、きれいなバランスとか、細かい「とめ」・「はね」とかを
きちんと覚えてないから、きれいに書けない。

もうひとつは、頭に描いているイメージを 手が再現できない人。
きれいな字の形は知っているのに、いまいちその通りに書けない。
ざっくり言ってしまうと、不器用というやつ。

絵においても まったく同じことが言える。

頭に絵が浮かばない人、浮かんでるのに再現できない人。。。

そんな分析をぼんやりしつつ、俺自身、字も絵もドヘタなのだ。
まわりは絵をサラサラ描く人たちがいっぱいなので
いつも「ええなあ~」とうらやましく思ってます。

頭になんのイメージも浮かばないんで、いろいろ見たものを
再構成して作品にすることがほとんど。

その例として紹介したいのが「北欧のASIMO」。
もともとは子どもが小さい時に ウサギの木彫りの人形を見て、
「あ! ウサギのロボット!」と言ったのがきっかけ。
木彫りの手足が動く素朴なウサギが ロボットに見えるんか~と
感心して、逆にロボットをあのテイストにしてみるかと
ロボット界の大スター「ASIMO」を素朴にしてみました。

既存のものを、既存のテイストにアレンジするという
オリジナリティ全くなしの制作方法で25年。まだまだ逃げ切るで!


「ダルマの目の黒いうち」

いやー、終わりましたねリオ五輪。しかも日本メダルラッシュで本当におめでとう!
選手たち、よく頑張った!駄美術界を代表して「ありがとう」を言わせてください。
って、何様やねん!駄美術界から祝福されても伊調さんも喜ばへんで!

しかし五輪で何が感動したかといえば体操の金メダリスト内村航平さんが試合の前に
ポケモンGOやりすぎで課金50万!!って。ちょっとどないしたら50万もなるんやろか。
ポケコイン買いまくりの大技連発か内村はん!もうあんたがポケモンになったらええねん。
技は「きんのちょうば」とかか。おお!ちょっとゲットしたいなあ「ウチムラー」。

さて、五輪疲れも抜けぬまま今月の駄美術は「ダルマの目の黒いうち」。
普段は白めのダルマは何かが達成されたときはじめて黒目を入れられる訳です。
が、このダルマは「ワシの目の黒いうちはそう簡単に黒目を入れさせへんで!」と
頑固にパッチリ目を見開いております。イキイキするんじゃなかろうかと人形用の
目を組み込んで作ったのですが、なんとも凝視できない怖さが出てしまいました。
世界一を達成したメダリスト達になら、だまって目を入れさせてもらえるかも
しれませんね。

「たれびんストラップ」

こっちの話もやはり ポケモンです。
せっかくなんで自慢しとこう。

現代美術二等兵ふたりはそれぞれ仕事を持っていて
普段はちゃんと働いている。
僕は大学を卒業してまず玩具会社に就職、食玩の商品開発なんかを
やってた。

で、ある日、ゲームの展示会で出口付近にあったあるゲームボーイの
ソフトに気付いた。
すでにセガサターン、プレステが発売されて、時代は3Dゲームへ
移行している頃。
ゲームボーイのドット絵のゲームに興味を持つ人は少なく、
あまり人気なかったと思う。
が、見た瞬間「なにコレ?! めっちゃおもろいやん!」
ということでゲームソフトの発売前から商品化の提案、申請をして、
世界初のポケモングッズ「ポケモンクラブ」が誕生!
もちろんゲームソフトそのものにはかかわってないけど、
商品化第1号は僕やったんです。

そんなこんなで、いまだにソフトの新作は毎回2種買って 
自分で交換しながら進めてます。
「GO」をちらちらやりつつ「サン・ムーン」を待ってるで。

さて今月の作品は「たれびんストラップ」。
作品をいくつかガチャガチャにしてもらったんですが、
これはガチャガチャ用に考えた最初からマルチプルな作品(商品)。
お弁当箱の醤油さしがいろいろな魚になってるというもの。
ポケモンのように世界に発信できるようなものを目指して、
日本特有の醤油さしをモチーフに選んでしまうチープな感性に
思考が支配されています。

「くまのプードル」

「くまの子見ていたかくれんぼー、お尻をだした子、一等賞♪」って
唄が昔あったけど最近の熊による人への被害をたびたび聞くと、もう尻出して
かくれんぼなんて出来ませんな。どこで熊の子が見てるやらわからへん。
きっと熊の子の後ろには親熊がおるやろし、そんなん尻むき出しで襲われたら
ニュースでなんと報道されるやろうか、と想像しただけであかんのです。
「かくれんぼしてました!」などと言っても誰も信じてくれんでしょう。
一説によると熊は最近人を食料と認知したらしく、その為襲ってくるとか。
僕らを見て「うまそー!」と目がハートになって追いかけてくるんですよ!
ハチミツとシャケだけ食っといたらええのに、この暴力クマ野郎!

で、今月の駄美術「くまのプードル」。
お馴染みの木彫りの熊の置物をさらに彫ってみようと思ったのがきっかけで
作りはじめた作品です。毛を刈り込む感じで進めて行くうちにプードルみたいに
素敵なスタイルに出来るのとちがう?と思いこうなってしまいました。
もちろん「くまのプーさん」とも掛けています。
しかし凶暴な生き物と思いこんでしまうと「くまのプーさん」でさえ何時
キバを剥くかと恐れてしまいますな。まあ、森では同じく凶暴なトラのティガーが
抑止力になってるのかもしれませんが。

「ぴょんぴょんぴょたきち大絵巻:ハイジャンプ」

あったかくなってくると毎年始まるのが恐竜博。
なんでか寒い間って あんまりやれへんよな。
こどもをつれてあちこち行くで!恐竜に会いに!

普段、なんとか生きた証しを残そうと、あれやこれや考えて作品を作ってるけど、
何億年物前の姿を化石として残してる三葉虫にすら勝たれへんな。
億年って。。。

三葉虫もこんなにあとになって、自分の姿が掘り出されるとは
思ってなかったやろ。そうなるんやったら もっとダイエット しといたら
よかったわ~。とか おばちゃん三葉虫は思ってるかもしれん。
って こんなこというてるからあかんのか。

さて今月の作品は 「ぴょんぴょんぴょたきち大絵巻」シリーズの続き、
「ハイジャンプ」。
ポンプを押したらジャンプすることに気が付いたぴょたきちが
自分で押してハイジャンプする技を身につけたところ。
って なにをいうてるんや 俺は。。。

「波平メガネ原寸」

娘が小さいころ、たまたま行ったスーパーのお菓子売り場に
「カールおじさん」が3時に来ますよ!という告知がありワクワクしながら
その時を待ってました。
で、時間になり、売り場の棚の陰からぬっと登場カールおじさん。
娘は「ぎゃあああああ!」と悲鳴を上げてその場から泣きながら
ダッシュで逃げ出したのです。10メートルは全力疾走したでしょうか。
なんでビビるねん、とその時は思ったのですが、
カールおじさんのデカいこと。
帽子部分を入れると2メートル20センチくらいあり、
顔の直径は90センチくらいはあったかと。
そんな巨体がおぼつかない様子でフラフラ出てきたらそら怖いかもしれません。
退場時には、スタッフに手を引かれていたりして別の意味でも怖かったです。
もともと二次元で完結しているものを立体化して現実世界に
登場させるという事は、めちゃめちゃ非現実的なことで、
心のどこかをぶち壊されるインパクトすら
感じるのです。ですので、僕自身はあのディ○ニーランドの彼達に対しても
同様の感想を持っていて、なんか怖いなあと思うのです。
娘は現金なものでミッ○ーと対面したときは実に嬉しそうでした。
一緒やろそれ、と思うのですが。
という訳で、なんでも立体化したらええってもん違うよなあ、と
思って作ったのが「波平メガネ原寸」。
波平さんがかけているメガネを原寸サイズで立体化しました。
よく「どこにいった!」と探していますが
こんなに嵩張るメガネすぐ見つかるやろ!
と思う次第です。

「ぴょんぴょんぴょたきち大絵巻:え?」

こないだ飲み会の時に ジェネレーションギャップの話になって
若い人は知らんやろうと
「映画の『ジョーズ』シリーズ。『ジョーズ』『ジョーズ2』『ジョーズ3』の次はなに?」
ってクイズを出したんやけど、それは若いかどうかとは関係なく、
単にジョーズが好きかどうかやと指摘された。そうなんか。

もう平成生まれが普通に働いてる時代。ギャップもいろいろあるわ。
海外旅行へ行く人に「スヴェルト買ってきて~!」とか言うてないんやろな。

今月の作品は「ぴょんぴょんぴょたきち 大絵巻」ってシリーズの「え?」。
鳥獣戯画風の挿絵のような5連作のうちのひとつ。
おたまじゃくしに手足が生えて、しっぽがなくなってどんどんカエルになっていくんやけど、
その中に変なしっぽがついたままのカエルがいる。
実は本物のカエルじゃなくて、ポンプを押すと飛び跳ねるおもちゃのカエルで、
最初はみんなにのけ者にされるけど、みんなを助けて人気者になる。。。という話。
話自体は書いてないけど、挿絵だけいろいろ描いた。

ざっくりいうとレオ・レオニの「アレクサンダとぜんまいねずみ」みたいなもんかな。
違うか。

この作品を展示した時に そのおもちゃのカエルを知らんという人がいて、
説明に困った。世代を超えて知ってるもんやと思ってたのに。
とりあえず「帰国子女か!」っと一回つっこんで、説明したけど。

だんだん世の中の世代とギャップが出来てるみたいで、
作品のネタ選びもなかなか難しくなってきた。
といいつつ、結局 自分らが楽しいもんをつくるだけやけどな。

ちなみにクイズの答えは「ジョーズ‘87」です。

「逆子ダルマ」

「春はセンバツから!」いやはや、全くその通り。
春といえばセンバツ、
センバツといえば春ですな。で、センバツの何が夏の大会と
違うかといえば行進曲がセンバツの場合は前年のヒット曲や話題曲。
その中でも僕がおぼろげに記憶があるのが松崎しげるの「愛のメモリー」。
この曲が今年の行進曲に決まりました!
とニュースで聞いて、「おいちょっと待てよ、あのジワジワ盛り上がって、
最後は突き抜けたように熱唱するあの曲でどない行進すんねん?」と
思ったのです。
で、いざ開会式を見てみるとなんとなくブラスバンド用になんだか単調に
アレンジされた「愛のメモリー」で球児のみなさんが手を大きく振って
行進しとるじゃないですか。
膝もしっかり上げて、手をもうなんか水平になるくらい振り上げて。
で、ちょっと気になったので昔のセンバツの行進曲を調べたら、
戦前なんかは軍歌で行進したりしていて時代を映してるなあ、と
思ったんですが昭和に入ってちょっとビックリ。
昭和36年「こんにちは赤ちゃん」。次の昭和37年が「幸せなら手をたたこう」。
これって行進せんとハイハイするんか!で、幸せなら手をたたこう、って
普通に行進出来へんやんか、いちいち「パチ、パチ」って
合いの手入れなアカンやんかこの曲!
などとツッコミつつ今年の曲はというと西野カナ「もしも運命の人がいるのなら」。
って何じゃそりゃ!知らんぞ俺そんな曲!どこで流行ったんや!!
と、いう訳で今月の駄美術はセンバツとは無関係、ツッコミどころ満載の
「逆子ダルマ」。
ダルマの中の人が上下逆さになってお尻が出ています。
これって作って並べてから気づいたのですが、いわゆる逆子って、
お腹の中の赤ん坊の頭が上でお尻が下になることで、
この作品は実は逆子ではなかったのです!ガーン!!

「カリオストロの城の指輪」

12月の展覧会初日にTwitterにアップしたネタ。
「知り合いに『カリオストロの城の指輪つくってくれ』って言われて
つくったんやけど なんか違うみたい。。。」と。

居酒屋での反省会の間、ピコンピコンとリツイートを知らせるスマホの通知音が
鳴り続け、数日で15,000リツイートに!
今までも「がっかりトリプル」(マーライオン+小便小僧+人魚姫像のやつ)や
シェーンの「ナスカの夏、ペルーの夏」(地上絵型蚊取り線香)なんかも
かなり拡散されたけど、最初のツイートが他人やったりして実感なかった。

拡散用の作品とでもいうべきネタが、無事広まってよかったわ。

あとで知ったんやけど、たまたまこの展覧会は
映画「ルパン三世 カリオストロの城」の公開日12月15日に
スタート。なんか運命的なものを感じるな。

どんどん拡散されて 多くの人の目に触れると、
何かしらあげ足を取りたがる人らもおって、
「無線と びっくり箱機能がついてない」みたいなことを書いたりしとる。
無線とびっくり箱機能が付いてるのは 
ルパンが作ったニセモノの指輪やからね。
本来の指輪の方にはそんなもん付いてない。
必死にいちゃもんつけようとしてるんやろうけど、知識が浅かったみたい。
残念!

よう考えたらカリ城は当時、公開前の特別試写会で見たわ。
もらったセル画もまだ持ってる。
とぼけて作ったようにツイートしたけど、実はけっこうディープなファンやわ。

スターウォーズもそうやけど、こんなに長いこと愛されるってすごいなあ。
俺らの作品は 日々消費されて忘れ去られていくんやけど
それもまたええかと。
来年は現代美術二等兵25周年! なんか後世に残るもんはつくれるか?

「ハトだるま」

改めまして、新年明けましておめでとうございます。
いきなり去年の話ですが、個人的に印象深かった出来事が
ツイッターで自作「ナスカの夏、ペルーの夏」を披露したところ
やたらめったらリツイートされまくり、おかげさまで製品化
までされたことです。
そのこと自体もネット社会の拡散性だとか、影響力の
強さも思い知り、ちょっと怖いな、いらんこと言わんように
せなあかんな、とか思ったのです。

又、印象深いといえば、リツートしたりお気に入りにして頂いた
皆様のプロフィールもせっかくなので拝見したのですが
ある方は「打倒アベ!」的な主張の方や一方その反対の
ネトウヨと呼ばれている方々も入り混じっていて、
「思想性のないバカバカしいモノはイデオロギーを
超えるやんか!」と驚嘆したのでした。
まあ、もともと思想性の無い作品ですからそうなるのかも
知れないのですが。。。
とりあえず、バカな作品の前には右も左も無いということで
世界人類が平和でありますようにという事で。

さて今月の駄美術「ハトだるま」。
何故か平和の象徴とされる鳥「ハト」ですが、
縁起物のダルマと合体させれば万事OKな気がして
作ってみました。くちばしの上の丸い謎の物体は
いまだによく分からないのですが、ハト感といえば
ここに集約されてますね。
という訳で2016年は難しい事色々ありますが、
たまにはバカバカしい作品をご覧いただき、とげとげ
した気持ちが少しでも和らいで頂けたらこの上ない幸いです。