月刊駄美術図鑑 2011

「ちゃぶDIE」

僕達の作品は基本的に小さいものが多いのです。その理由は
制作スペースや保管場所の関係もあるし、発想自体が下世話なもの
が中心で特にスケールの大きな作品を作ろうとか、空間に対して云々
という事はほとんど考えていないからかもしれません。
言い換えると発想のスケールが小さいという身も蓋もないことになるのですが。
しかしたまに思いついたものがある程度の大きさになる場合もあり、
その時は狭い制作スペースであちこちぶつけたりしながら色を塗ったり
削ったりしながら作っています。

この作品は実際のちゃぶ台を改造しようと思ったのですが、なかなか
いいサイズ、形がなく、アンティークだと、もったいない気がして(単に
高いから諦めたのですが)コンパネを円形に切り抜いてもらい
それらしく作りました。
シンプルな仕上がりの割にいろいろ手がかかり、実際面倒でした。
それがこの「ちゃぶDIE」です。「台」と「DIE」がかけてあります。
DIEだから死んでいます。包丁刺さったりしています。そう、見たまんまで
ございます。それ以上でもなんでもないところが発想のスケールの小ささ を
より際立たせているのかもしれません。
そういう訳で来年は制作発表20周年。これからもちんまりとやりまっせ!


「激やせ」

最近、往年のアイドルの出演する番組がやたら多い。
歌番組はどれも過去の名曲のコーナーがどんどん割合を増やしてるし、
バラエティやトーク番組でもひっぱりだこ。
「今だから言える衝撃事件!」みたいなアオリでやるコーナーも
聞いたことある話が多くなってきました。
もはや「懐かしの~」ではなく、超売れっ子状態です。
これだけ出てると今の人たちがこれを見てインプットされ、
また数年後に懐かしキャラとして登場できるのでは? 
そうするともう誰がいつの人かわからなくなってきて、
世代のギャップが埋まりそうですね。
んなわけないかあ。

しかし そういう番組は
なんだかんだで見てしまう上に 録画したら消すことができない。。。
あああ 思う壺。。。

さて今月の作品は「激やせ」。
写真のコラージュってあるんで、立体物やフィギアも
コラージュしてみっかとコレクションをバラバラにして
再構成していった“ミクスドフィギアシリーズ”のうちのひとつです。
最近見ないと思ったら…という声が聞こえてきそうなトップスターの
その後をつくってみました。


「民芸作品は今寝ています」

もうかれこれ30年くらい前かもしれませんが
大阪の天王寺動物園の夜行性の生き物がいる小屋があって、中は暗く、 特殊な照明の下、
コウモリなんかがたくさんいたりしました。というか、コウモリがいたことくらいしか
覚えてなかったのですが、此処にきていまだに未消化な事 があります。

その場所で、一番記憶に焼き付いてるのが いつ行っても看板に「キウイは今寝ています」と
キウイ舎の前に 看板があったのです。夜行生物のコーナーやのに。なんでか。
体内時計は正確なんやろか。…といつかあのキウイフルーツの ようになると言われる姿を
みたかったのですが、最近何年かぶりに 行った動物園でもキウイは発見できず。
ほんまにそんな鳥 おるんかと、飼育係の妄想ちゃうんかと、イラチな僕は情けない 怒りに
くすぶっていたのです。

で、今月の駄美術「民芸作品は今寝ています」。そんな動物園での エピソードを
再現するため、ギャラリーの一部屋を暗くし、 全部の作品が寝ている展覧会を
開催したときの作品です。 せっかく来たのに残念、な感じを目指しました。


「送りオオカミ」

以前、仕事で定期的に打ち合わせがあったとき、
毎回5人くらいで会議をしてたら、
その中のひとりのおっさんが まあしゃべるしゃべる。
2時間くらい  ひとりでしゃべって ひとりで笑ってる。
その内容がまた ひとつもおもしろくない。

毎回、会議が長引くので、僕は極力 必要なこと以外しゃべってなかったんやけど、
他のメンバーから見たら、このおっさんは「楽しくてユーモアのある人」で
俺は「つまらない人」なんじゃないかと…。
そういえば 最近 誰としゃべっても 特におもしろいことも言ってないし、
僕と接してるほとんどの人が「おもしろくもなんともない人」と
思ってるんじゃないかとも思えてきた。

こう書くと ホントはおもしろい人で、上から見下ろしてるみたいやけど
実はおもしろくないのか…

俺は何者なのかという昔のSFのようになってきた。
ええように考えすぎか。

でもホントかどうかは別として 大半の人がそう思ってるんなら
そういうことやろな~。
ちょっとは 人よりおもしろいと思ってたけど。

低いテンション・通らない声・印象に残らない顔… 
3拍子揃った完璧な「おもしろくもなんともない人」やな。

これからはそれを自覚して無理のない生活を送ろう!

さて今月の作品は「送りオオカミ」。
深く考えず、これくらいのことをバンバン言っていった方がいいかな。
ちなみにオオカミのフィギアが手に入らなくて シェパードで代用。
これくらいのフランクさで どんどん行こう。

「ナスカの夏、ペルーの夏」

今年の夏は震災の影響なのか何なのか、去年といろいろ 違いますね。まず、梅雨明け早々に各地36度超え。 いきなり大型台風。そのあとは変に冷夏で夜は寒かったり。
そして一番不安になったのがセミが鳴くのが遅かったこと。

蚊の発生も遅かったですが、それはむしろ有難いほうで セミがなかなか鳴かないとなんとも
不安な気持ちになりました。 地震のせいで地中で幼虫がどうにかなったのでは?とか
冷夏のせいで成長が遅れてるのか?とか、他に考えな あかんことが一杯あるのに、セミの
ことが気になって気になって。 と心配が僕の中で頂点に達したころにセミが大量発生。
ようやくほっと胸をなでおろす日々です。
今ではそのやかましさに、さっさとセミシーズン終わったら ええねん、などと勝手な事すら
考えております。

と言うわけで、今月の駄美術「ナスカの夏、ペルーの夏」。
セミとは逆に、いなくなっても全然OKな蚊。汗かきで 太り気味な僕は毎夏蚊の標的に
なりやすく、虫除けスプレーが 俺のフレグランス!というぐらい蚊が嫌いなのです。
そんな蚊達にむけて、人類最大の謎といわれるナスカの地上絵 を模った蚊取り線香を
作ってみました。「おお!これは一体 なんのために!?」とおどろくうちに 蚊が煙に
巻かれますように。

「未完の大作」

みなさんは「ゲルググ」って 知ってますか?

東南アジアの果実のような、見知らぬマイナースポーツのような奇妙な名前ですが
いわゆる「機動戦士ガンダム」に登場するモビルスーツ(ロボット)のひとつです。

この“ゲルググ”。二等兵ふたりには違う意味合いもあります。

ガンプラブームの絶頂期に中学生だったわれわれは、
模型好きのバイブル「ホビージャパン」を 読みあさっていました。
そこにはいろいろな模型の作例(上手な組み立て方や改造例)が 紹介されています。

今でも大手メーカーが出している商品は、形状がパーフェクトと思ってる人が多いのですが、
もともと現実にありもしないアニメのロボットを商品化するわけですから、
完璧なものではありません。
金型の抜けの方向やコストによる省略部分なんかもあったりして、多少ゆるかったり、
不恰好だったりする部分があるのですが、ホビー誌のモデラーさんたちは 
「太ももを2ミリ伸ばせばスマートに!」とか、
「肩の取り付け角度を変えるといかり肩でカッコいい!」とか実践して見せてくれるわけです。

「1/144ゲルググ」というプラモデルの作例では、そのままだと顔がちょっと太いので、
顔の左右パーツを接着する前にそれぞれヤスリで削って 
細身の顔にした方がカッコいい!というのが載ってました。

さて時は流れて大学時代。
予備校時代にいた女の子と そっくりな女の子が後輩として入学してきました。
そっくりだけどちょっと顔は細身。
それを見た籠谷は「あの子 ○○さんの“ゲルググ”みたいやな。」…
!!
頭の中でシナプスがビビビとつながりました。
ああ そうだった! ゲルググって 顔幅を縮めたんだった!!
なぜそんなことを覚えてるのか!?

数年後 そんなふたりが「人間なんて」を歌いながら 学祭の模擬店を破壊して回ることに
なろうとは知る由もありませんでした。。。

それ以来、顔幅が狭い・目と目の間が狭い人は“ゲルググ”と分類するようになりました。
二等兵から言わせると トップアイドルグループの第1位の人も“ゲルググ”です。
もうちょい幅があってもいい。

さて、そんなプラモ好きの二等兵がお贈りする今月の作品は「未完の大作」。
ミロのヴィーナスの 発見されていない手を別パーツにして、プラモ化してみました。
これが発売されたら、また更にかっこよくなるように改造されるのでしょうか?

「はいっ!どこでもルーヴル!」

僕の人生に影響を与えた漫画が何点かあるのですが、その内の ひとつが「ドラえもん」。
初めて知ったのが小学2年生に単行本 の広告が載っていて、ドラえもんが「おなかが
痛くなるほど面白い!」 と言ってる絵が描いていて「ドラえもんが言うなら間違いない」と
思い小遣い握りしめて本屋へ行きました。なんとなく1巻から買おう と思っていたのに
売っていたのは3巻だけ。まあいいかと購入。
帰って読むとまじでオモロイ!あの名作ライオン仮面の話があったり
宣伝に偽りなしと大満足。結局20巻くらいまで買い続けました。
個人的にはドラえもんの3巻から6巻までは神懸かってるなあと 思います。
もうひとつ大好きだった漫画「マカロニほうれん荘」も3巻から 6巻くらいが最高潮に
面白かったと思うのですが、何か法則でもあるのか なあと。
「がきデカ」もそうかも。まじで法則!?
自分たちの展覧会でいえば「現代美術二等兵展」「かんチガイパワー展」
「演歌チャンチャカチャン展」がそれにあたるのですが・・・・例外?。

さて、今月の駄美術はドラえもんが「これがあるとどんな場所でも ルーヴル美術館だよ」と
言ってミロのヴィーナスを出している作品です。 「そのままやんか!てかそのヴィーナス
どこから持ってきたんや!」と のび太が言いそうな、漫画の1シーン(妄想)を再現。
二等兵的にはまだまだ3巻から6巻までの法則は発動されてないかも しれません。

「ニホンの音楽隊」

結構「スターウォーズ」好きなんですが、あのアニメのは なんか受け付けません。
何度か見てみたんですが、何を言ってるのか 何をやってるのか まったく頭に入ってこない。
なにをヒョコヒョコ歩いとんねんと 思うくらいで 何の感想もない。

なんでなのか 考えてみたら、 「スターウォーズ」の何が好きなのかというと 
ミニチュアや着ぐるみや特撮で ありもしない世界を具現化してみせてるところが 
わくわくするんであって、そんなんアニメやったら なんでも描けるやん。

「あれって象になんか着せてんのかな」とか、 「大軍団のどこまでが人間やろか」とか思う
“見てる側”と、 それを欺く“作り手側”との争いが好きなのかも知れません。

その一番キモの部分が全くないアニメ版は そりゃ俺にとっては
な~んにも意味も魅力もありません。

さて今月の作品は「ニホンの音楽隊」。
北欧の木彫りのおもちゃがかわいく人気があるので、それ風に日本の生き物の
ブレーメン状態をつくってみたんですが、 見た人の反応は特に無し。
“北欧風”が好きなわけじゃなく、ホンモノの“北欧雑貨”が好きなんですね。

ちなみに動物たちは ニホンカモシカ、ニホンオオカミ、ニホンカワウソ、ニホンザリガニで
音楽隊のわりに鳴きそうもない甲殻類が混ざってるのも敗因かと。。。

「かんチガイパワー」

今回の大震災で、15年前の神戸の震災の事をいろいろと 思い出しました。
地震の後、1週間後くらいに阪神電車が芦屋駅の少し先の
青木駅まで開通したので、JR兵庫駅近くに住んでいる被災した
大学時代の友人のもとへ東京から帰っていたふじわらと二人で
お見舞いに行くことにしました。
もちろん青木から兵庫まで徒歩だったのですが、大体5時間ぐらい
かかったと思います。
あんなに休み無しであるいたのは、後にも先にもこれが初めてでした。

道の左右は崩れた家々。がれきの山が延々と続きます。屋根が曲線を描いて
崩れていたのを見て「家はこんな風に壊れるのか…」と変なところに
関心したりしました。
一階がベンツのショールームのビルは、ダルマ落としの様に 上階部分が落ちていて、
下敷きとなったぺしゃんこのベンツのテール部分が隙間からはみ出していました。
埃っぽくて、なんとも言えない匂いが混じる中、あまりの非現実的な状況に、
夢の中で「これは夢に違いないっ!」と思い込もうとするような
感覚に近い錯覚を覚えました。
あちこちに貼られた紙には「○○に避難します」や「○○、これを 見たら電話ください」
といったメッセージが書かれていて、いつもなら冗談ばかり言い合う2人ですが、
さすがに口数が少なくなっていました。

友人にお見舞いを届けると、帰りはハーバーランドから天保山に 船が出ているとの
ことなのでそちらへ向かいました。そこではまだオープンしてそんなに経ってない
ショッピングセンターや海辺のテラスが無残なかたちで現れ、疲れた体に更に追い打ちを
かけられさすがにゲンナリ。帰りの船の中は、同じように物資を届けた帰りの人や、
避難する人でさながら引き揚げ船のようでした。
梅田に戻り、四ツ橋の焼売太楼で晩飯を食ったのですが、海を渡って 異次元から
戻ってきたような、本当に不思議な気分でした。

今度大きい地震が来たら、何を持って逃げるかな?そう考えたときに 普段は色々と物に
執着していたはずなのに、すごくシンプルなものだけで いいか、と思うようになっていました。
ただ、人間の恒常性なのか 僕がたまたまそうなのか、数年もするとそんな気分も
元に戻って いたのですが…。

さて、とりとめの無い話を長々とすみませんでした。
その震災の年の秋にやった展覧会が「かんチガイパワー展」でした。
まったくもっていつも通りのニュアンスの展覧会で、天使がサブテーマに
なっていたのが少しは震災の影響?かと思ったりします。
「かんチガイパワー」というのはちょっとかん違いしてるのにものすごいパワーで
突き進む人がいる。むしろ、かん違いしている人の方がパワーがあるように感じる。
そんな「かん違いパワー」が存在することを伝えたかった展覧会。

もしかしたら今、そんなむやみでも前向きなパワーがあれば復興の 一助になるのではと
思っています。ポジティブな意味で。
今月はそんな「かんチガイパワー」を図解したものを紹介します。

この度の東日本大震災で被災された皆様にこの場を借りて謹んで お見舞い申し上げます。
一日でも早く復興し、「ああ、二等兵とかいうのあったな。」と思いだして
このサイトや作品で脱力してもらえるような日が又来ることを願ってやみません。

「愛の巣」

すごいなあ。

仕事でおもちゃショーや、ギフトショーに行ったりすると
いいアイデアやいいデザインに 結構出会います。
そんなときは 悔しい半面、もうただただ「すごいなあ」と素直に感心することにしてます。
もうあ~だこ~だは いいじゃないかと・・・ 「ええもんは ええ」「すごいもんは すごい」で
 ええやんかと・・・。

2月に終わったグループ展「愛の秘密工作室」でも他の出展者の作品を見て 
しきりに「すごいな~」と うなってしまいました。
やー おもしろかった。勉強になりました。

ご来場の方も 概ね喜んでいただけたようで、よかったです。

普段は 他の方に迷惑がかかるんじゃないかとグループ展というのは 
どちらかというと苦手な我々なんですが なんでもチャレンジしてみるもんですね。
いい経験になりました。
なんとなく猪木の「道」という言葉を思い出しました。行けばわかるさ!

今月の作品は  そんな「愛の秘密工作室」に出品した作品のひとつ「愛の巣」。
ビーバーが“小枝”で巣を作っているシーンのジオラマです。
見た人は「すごいなあ」と思ってくれたのでしょうか・・・。

「アンドロメダハムニダ」

最近K-POPということでKARAとか少女時代とかがテレビで話題になってますね。
ちょっと前の韓流ブームのときはドラマなんかは7,80年代の日本の恋愛ドラマみたいに
ベタな世界で、ノスタルジックな共感みたいなものがあるから流行ってるのかなあ、
と思ってました。

で、例えば少女時代ですが、何か無機的な美しい女性が集団で歌って踊ってるわけ
ですが、ここ最近の日本のアイドルの傾向でもある、親しみやすいとか、
クラスにいそうな、とかいうイメージとは逆に、ちょっと無理めなかんじとでもいうのか
変な完成度があるなあ、と思うのです。日本でも、普通に綺麗な女性グループも
あった気がするのですが、ここ最近ではぱっとしたのがいなかったですよね。
そう思うと、これは日本のレプリカではない韓国オリジナルのものが
受け入れられているということでしょうか。

さて、今月の駄美術「アンドロメダハムニダ」。アンドロメダ星雲の真ん中に
ハングルで「星雲」と書かれています。
なんでこんなものを作ったかと言うと、作品タイトルをまず思いつき、
そのあまりのはまり具合(僕が思っているだけですが)に無理やり
イメージを作品化すると、こんなかんじになりました。

「アンドロメダハムニダ!」なんか言いそうですね。
韓国といえば、学生のときの研修旅行で行ったのですが、皮ジャンを値切って、
思う値段にならなかったので、断ってバスに戻ると「いくらなら買うかーっ!」と
叫びながらバスに乗り込んできたので、仕方なく買ったのを思い出しました。

「思い違い」

このあいだ ある企業の社長と話す機会があって
開発者のレベルの低下について話したんですが
その方いわく、もうそれはしょうがないと…。
その状態を受け入れた上で、どうするかを考えないといけないと。

確かにそうですね。
昔は良かったと懐かしんで文句を言っているだけでは
何も進まない。
「しょうがない」から どうしていくかが大事なわけです。

もろもろがんばっていきましょう!

なんだかんだで 年が明けました。
今年こそは飛躍したい…ということで
今月の作品は羽根の生えた物を。

「嗚呼!改造彫刻ヴィーナス」展より「思い違い」です。
ニケ像の羽根をヴィーナスにつけたのですが
これが間違っているという事に気づかない人 多数で
説明してもあまり納得してもらえませんでした。
まあ しょうがないですね。